人類は「菌類」が好き?

ぺんぎん堂の飯島です。意見は、私個人のものです。

立冬 第五十六候『地 始めて 凍る』

 日中は、陽射しもあるようですが、次第に不安定な天気に変わりそうな今朝の空模様です。世の中も、「消費税」をめぐる判断と解散が結びついて、波乱の展開になりつつあるのを映しだしているかのようです。
 今日の珈琲は、「マンデリン」です。おいしい珈琲というのは、淹れ方が難しいと、いつもながら、反省しつつ飲んでいます。本当は、ここで最近読んだコーヒーにまつわる本を紹介するつもりでいましたが、その前に、取り上げたい本があって、しかも、だき合わせにするには、ジャンルを選ぶだろうということで、コーヒーについては、次の機会にします。

あるだろうと思っていた『本』です、『毒きのこ』について

 最近も、毒きのこを食べて中毒を起こしたというニュースが流れていました。思いもよらないリスクではないのですが(むかしから毒きのこによる食中毒はありました)、野草を食べたりとか、食材に関する関心も多様になると、起きてくる事故の位相はこれまでと違っているのかもしれません。

毒きのこ 世にもかわいい危険な生きもの』(新井文彦写真 白水貴監修 ネイチャー&サイエンス構成・文


 私自身は、秋になれば、「あっ、松茸の季節だね」と詠嘆する程度には、きのこが好きです。しかし、世の中には、こよなくきのこを愛する人がいることもなんとなく知っていましたし、それは当然だとも思います。しかし、世に「きのこ写真家」という人がいることは、本書ではじめて確認することができました。
 本書の写真が、いわゆる、よくある「毒きのこリスト」本と違っているのは、なるほど、そうでしたか、ということなのです。
 そして、菌類の分類学が専門の監修者、ちなみに「菌類」というのは、細菌とはまったく別の生き物で、細菌の研究によれば、「動物とも植物とも違う生物で、植物より、むしろ動物に近い生き物だということがわかりました。」というように、不思議な生物の物語の一端が、本書に興味深く紹介されています。

お二人に、ウエブサイトがあるのでご紹介しておきます。いやー、面白いです。

新井文彦『浮雲倶楽部』http://ukigumoclub.com/

白水貴『白水の穴』https://sites.google.com/site/ornithomyces/
 
 ところで、「人間が、最初に出会った毒は、毒きのこによるものではないかともいわれています。」とあって、本書には、古代ローマから平成まで、毒きのこの中毒事件の一部が紹介されていますが、近年、意外な職業の探偵が登場する、ライトノベル系のミステリーが盛んですが、きのこ写真家と菌類学者が登場するミステリーはまだないのだろうか、などとふと考えてしまいました。
 しかし、「スギヒラタケ」というかつて食用とされていたきのこが、いまでは、一転、毒きのことして扱われることになるなど、以前から謎の病気とされていたものが、その原因が「毒きのこ」ではないかともいわれているようです。
 「そもそも、なぜ毒きのこは動物を不調にし、ときに死に至らしめるほど強力な毒を蓄積しているのでしょうか。この問題に対して、科学的に納得のいく説明はまだなされていません。」
 そして、世界に150万種ほどいるといわれる「菌類」、報告されているのは、そのうちのほんの数パーセントだということです。つまりは、未知の生物の世界が、この地上に広がっていることになります。「生産者」の植物に対して、「消費者」の動物、菌類は「消費者」であっても、「分解者」として「生産者」が利用しやすくする働きをしている、といいます。
 うーん、寒い夜、お鍋の中の、毒じゃない「菌類」をつつきながら、あれこれの想いにふけるのもいいかも知れません。


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