誰がなるにせよ、就任演説を読み解こう

ペンギン堂の飯島です。意見は私個人のものです。

立冬 第五十五候『山茶(つばき) 始めて 開く』

 この時期に咲き始めるのは山茶花です。
 旬のやさいは葱、果物は洋ナシです。先日、長野県の方からラフランスをいただきましたが、まだ食べごろになっていません。
 今日の珈琲は「ケニアAAキアワムルル」でした。寒くなってきたのですが、控えめの温度で淹れました。後味がさわやかな感じで、いかにも嫌みのない美味しい珈琲になりました。
 
 さて、間もなく、といっても明日のことですが、アメリカの大統領が誰になるのかはっきりします。クリントンさんにせよ、トランプさんにせよ、これまでのアメリカとは違う国際社会の枠組みへとスライドすることは間違いないと思います。メディアの報道も、クリントンさんなら、何となくこれまでのアメリカの延長線上に様々な案件の在りようを描けるように思い込んでいる節がありますが、それは果たしてどうでしょうか?覇権国家アメリカの凋落は誰の目にも明らかです。そんな状況の中で、どのようなかじ取りをするのか、いくつかの意味で、不安が(健康面にもという声もあります)払しょくできないからです。
 トランプさんのほうが案外読みやすいかもしれません。保護主義、内向きなアメリカはこれまでも、もう一つの本当の素顔だったのですから。
 それはともかく、この時期に読んでおきたい一冊が、本書です。どちらが大統領になっても、就任演説はありますから。


大統領の演説 (角川新書)パトリック・ハーラン 著)



 著者は、「パックン」です。「アメリカでは、日本のような『以心伝心』や『あうんの呼吸』なんて発想自体がありません。」から、「言葉ではっきりと表現し、伝えないといけない。」のは、人種や民族がバラバラの多民族国家アメリカだから当然のことのはずが、つい、日本人の感覚でとらえてしまうのですね、私らは。
 言葉の力を信じるのは、本来、洋の東西を問わない人間の文化の本質であるはずなのですが、強くこのことを主張するのが西欧社会でもあるように思います。
 アメリカという国家の世界における位置づけを考えれば、「歴代のアメリカ大統領は、時に言葉の力だけで国民を、そして世界を動かしてきたんです。」という言葉は素直にうなづけますね。大統領選挙戦は激しい争いですが、勝利したものは、その演説にさらに磨きをかけなければなりません。というのも、「自分を選ばなかった国民にも支持してもらうため、大統領になった初日に行う『就任演説』には120%の力を注ぎ込みます。任期中には自分が掲げたさまざまな政策を実現させるために、スピーチによって理解を得ようとします。またテロや戦争など国の危機に瀕したときには、国民を励まし、奮い立たせ、団結させるメッセージを発しなければいけません」。
 特に今回の大統領選挙の場合、誰がなるにせよ、『就任演説』の内容がこれまで以上に注目されるわけで、そのスピーチを読み解こうとするならば、そのスピーチがいかなる技術を駆使して作成されたのかを知ることは、大きな助けになることは間違いないでしょう。
 実は、アメリカ人の優れたスピーチは天与のものというよりは、技術であり、その技術を身に着ける努力があってのモノだというのですから、この際、その技術を、歴代大統領のスピーチの中から、著者が選んだ名演説を教材に学んでみようではありませんか。
 大統領就任演説は必ずテレビで放映されます。その演説のつかみや、スピーチの背景を知れば、その時のアメリカがどんな時代だったかを理解することもできるのではないでしょうか。「大統領のスピーチを読み解くと、スピーチテクニックが学べると同時にアメリカという国も知ることができるんです。」というのは魅力的ですし、リスクの高い両候補のどちらが就任しても日本に大きな影響があることは間違いないのですから、誰かの説ではなくて、自分で読み解けたらいいですよ。
 ということで、今回は本書をお勧めします。
 もし、クリントンさんがなったらという一冊は次回に。トランプさんになったら、その時考えましょう。



Amazonでどうぞ