問題は、経済なんですよ
班長の飯島です。
すでに、気配は秋です。グローバル経済は、依然として不確実性を増す状況が続いています。特に、米、日の国債格付けの引き下げなどにより、いわゆるソブリン危機が強く意識されています。
この流れは、当然、すでに課題になって久しい日本の財政再建問題が、再び、新政権の政治日程として浮上することになるでしょう。
一方で、東京電力の第二4半期決算もいずれ公表され、指摘されてきた様々な課題が明確になると思います。この問題も、取り上げなければならないと思います。
8月23日付けの日本経済新聞「一目均衡」の「It's the economy ,stupid」という1992年の米大統領選挙の際のクリントン候補が父ブッシュ大統領に向けた、攻撃の言葉を紹介していました。(それ以外にもテーマはあるのですが、それは別の機会にします)
まさに、「問題は、経済なんですよ」という時代であることを踏まえると、23特別区の財政力について検討することから、明日の財政運営のヒントを探ることは、大事な取り組みといえるでしょう。
さて、経常収支比率を時系列で追ってみたいと思います。平成17年度から平成21年度の5年間について、23特別区の経常収支比率の平均値を表に示しました。
区名 | 平均値 |
港区 | 59.24 |
千代田区 | 69.12 |
品川区 | 71.78 |
江戸川区 | 73.64 |
葛飾区 | 73.9 |
渋谷区 | 73.9 |
中央区 | 74.46 |
文京区 | 75.22 |
大田区 | 76.1 |
江東区 | 76.2 |
荒川区 | 76.62 |
足立区 | 76.64 |
台東区 | 78.04 |
杉並区 | 78.06 |
練馬区 | 78.82 |
豊島区 | 78.9 |
新宿区 | 79.1 |
世田谷区 | 79.78 |
北区 | 80.16 |
板橋区 | 80.86 |
中野区 | 81.5 |
目黒区 | 83.68 |
墨田区 | 85.04 |
平均 | 76.72 |
21年度と、5年間の平均値とを比べると、出入りがあることが確認できます。もちろん、港区は不動のトップです。2番目に千代田区が来て、時間のフィルターをかけると安定していることが見て取れます。品川区までの上位3区は、当然と受け止められます。しかし、その後の順位は、23年度と並びが違っています。渋谷区が中期的に見るとさすがに強く、12位から6位にランクアップしています。
江戸川区、葛飾区が、文京区、中央区を抜いて、4位、5位です。ベスト6の上位区を見ると、港区、渋谷区、千代田区の財政力指数が高い区と、品川区、江戸川区、葛飾区という、財政力指数で見ると、港区の半分以下という、2つのグループに分かれています。
詳細に見れば、品川区が少しグループの中で違う感じがします。そのことは先に行くと分かるのではないでしょうか。
下位の6区については、目黒区と墨田区の順位が入れ替わっています。しかし、墨田区と目黒区の財政力指数は、それぞれ、0、38と0、71です。それでいて、この5年間、墨田区が3回、目黒区が1回、の23位。さらに、ワースト3で絡まなかったのは、平成19年度の1回だけです。もっともこの年度も、19位で20位に中野区との差は、コンマ7の僅差でした。この19年度、23位は北区で、北区はこの結果が響いて、5カ年の平均では19位にランクされています。
ここで注目しなければいけないのは、葛飾区あるいは江戸川区が、なぜ、5カ年間の平均値でも上位にランクされるかです。墨田区の財政力指数は0、38です。それに対して、葛飾区は0、37です。この2つの区の明暗を分けているのは何か。それは逆ですが、目黒区にも当てはまる疑問です。
その疑問に踏み込む前に、もう少し時系列のデータを見ていくことにします。
このデータで各区の標準偏差を出してみました。つまり、経常収支比率のばらつき、各年度の財政運営の結果がどの程度に反映されているのか、財政の硬直性は財政運営の安定性とどのような関係があるのかということです。
意外なことに、ぶれていないのは荒川区です。港区も結構ぶれています。中央区の方が、千代田区より安定的で、ばらつきは少ないです。標準偏差が、一番大きいのが目黒区でした。次が渋谷区で、良いときの数値が引っ張っています。財政力指数は低くいのに、経常収支比率は悪化していない、葛飾区や大田区、足立区などは、標準偏差も23特別区の平均の偏差に近いのでした。
疑問を抱いたまま、理論と現実を結び付ける指標について、予告編的に取り上げておきたいと思います。
それは、経常一般財源比率というものです。第八版 体系 都財政用語事典によれば、「経常一般財源比率」とは、制度上想定される標準的な一般財源収入〈標準財政規模)と、現実に収入された経常一般財源の収入額とを比較することで、当該地方公共団体の、一般財源のゆとりを見ようとするものとされています。
次回はこの財政指標で、見えてくる23特別区の財政力の仕組みを探ってみたいと思います。