第2の疑問、税法上の問題はないのか

 次の疑問は、損失飛ばしの方法に関係した疑問です。
 これまでの報道等により、推測していた損失先送り、減損処理の方法を、概略述べれば次のようになるのではないでしょうか。損失が発生した投資物件について、海外ファンドや特定目的会社を設立して、簿価で引きとらせます。連結対象ではないので、これで、不良資産をオリンパス本体から切り離すことが可能になります。
 買い取り資金は、オリンパスの預金を担保に、海外の金融機関などからファンドなどに融資をさせることで調達するというものです。
 第三者委員会の調査報告書で、大筋は間違っていなかったことが確かめられました。しかし、このスキームでは、いつかはこの担保の解除をはかるため、融資の返済をしなければなりません。そのための資金が必要になります。この資金調達を、企業買収による過大な「のれん」の設定により、過剰な部分を発生させ、それに対する支払いで、資金環流をしていたものです。「のれん」については、会計規則に従って「合法」的に償却処理をすることで、この損失隠しの「プロジェクト」は完結するということが考えられたのでしょう。
 企業価値を評価して、純資産以上の値段を付けた部分が「のれん」ですから、この資金環流スキームが機能するためには、資産評価を行う協力者がいたことになります。
 第三者委員会の調査報告書の概要版では、「本件国内3社の買収にかかる事業価値の試算を行った公認会計士等ににヒアリングを行った」とあります。意図的な「のれん」の水増しとそれに関わる支出行為は、損失の隠蔽に関わって、新たな不正、背任行為の発生にならないのでしょうか。この点については、新たに設けられる調査委員会が明らかにするのでしょう。
 でも、疑問の第2はそのことではありません。
 環流するための資金は、買収企業の「のれん」を水増しして生み出したということになれば、それは対価性のない支出いということにならないでしょうか。
 実は、会計関連の書籍の中では、ほう、というエピソードと会計規則が紹介されている「決算書の50%は思い込みでできている」という本があります。見かけはかわいい風の装丁ですが、結構、発想のヒントがあって、お勧めの一冊です。この疑問も、そういえば似たような事があったんじゃないか、ということで浮かんだものです。この本の第3章に、ハイビックの企業買収に関する減損会計のトラップが紹介されています。ハイビックの買収した会社について、得体の知れない「のれん」が計上され、それを減損損失処理したことによる問題が書かれています。
 その、得体のしれないの「のれん」相当額(オリンパスでいえば、水増しした「のれん」相当額)について、「税務上は、対価性のない支出である「税務上の寄付金」として認定される可能性があります。」ということが書いてあります。税務上の寄付金には、損金算入に限度があり、課税対象となるというもので、水増し分は「低額譲渡」であるとすれば、それは寄付金とされることになり課税対象となる、というのがこの本の著者の指摘です。具体的事例として、「SBIホールディングス」が「税務上の寄付金」として認定され、そのことについて東京国税局からの指摘により、30数億円の修正申告に応じた事例も紹介されています。法人税法第37条が根拠法規です。各項の規定はわかりにくいのですが、関心のある方は検索してみてはどうでしょうか。

 しかも、「のれん」の減損損失を計上した決算期に監査法人が、任期満了という理由で変更されたことについても、この本は、述べています。(付け加えると、「りそな」についても、書いています)。
 減損の規模はけた違いにオリンパスの方が大きいのですが、監査法人の交替なども加え、なんと今回のオリンパスの事例とよく似た構造に思えるのは私一人ではないでしょう。