国連海洋法条約第15部

 班長の飯島です。
 意見は私個人のものです。

国連を舞台にしたソフトパワーのたたかい 
 さて、「竹島」の問題です。国連総会、「法の支配」をテーマにした会合で、日本の玄場外務大臣と韓国のキム・ソンファン外交通商相が、それぞれ相手をけん制する演説を行った。二人の演説に対する評価はどうなるかはともかく、「竹島」に領土問題が存在することが、国連という場でアピールされたということでしょう。これは、明らかに、大統領の上陸という失策の延長上のことでしょう。(参照:読売新聞、9月23日 「地球を読む」)
 野田総理も、国連の一般演説で、領土問題にふれて一般演説を行うが、「尖閣」国有化が失策の色を濃くしている現在、よほどの演説でなければ、「尖閣列島に領土問題は存在しない」としてきた日本の立場が危うくなり、領土問題が存在するとの中国の主張が国際的な舞台に上がることになりかねないでしょう。どちらにしても、言論の力というかソフトパワーが問われる場でもあります。
 「竹島」では、国際司法裁判所への提訴をめぐって互いをけん制する演説ですが、キム・ソンファン外交通商相が「国際的な司法手続きを政治的に利用すべきではない」といえば、玄場外相は、国際紛争を法に基づき平和的に解決する手段としての国際裁判の重要性を強調したいと述べた後、「より一層国際裁判が活用されるよう、より多くの国が国際司法裁判所強制管轄権を受諾するよう求める」と述べました。これは、日本が強制管轄権を受諾していることをふまえ、韓国が受諾していないことへのけんせいでしょう。

もうひとつの裁判所
 しかし、国連海洋法条約には、さらにいくつかの裁判所が、紛争解決の手段として示されています。「竹島」については、そちらからの法的手続きがあるのではという、提案もあります。ひとつは、海上保安庁による、海上警察力というソフトパワー(犯罪捜査)の機能と枠組みとそれに基づく国際協力関係の構築と、国連海洋法条約に定める「国際海洋裁判所」への提訴の組み合わせの意見http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35721と、「竹島」については、1999年に発効した「新日韓漁業協定」に関する紛争の強制調停として、「仲裁裁判所」に持ち込むことが可能ではないのかというものhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/2143があります。日韓漁業協定については、第13条に紛争解決手段としての「仲裁委員会」の設置が規定されていますから、まずこれを発動する必要があるのではと思えます。それはともかく、紛争解決における強制適用の範囲は限定的というのが「海洋法」の構造にあるようです。このあたりについては、小田滋氏の『小田滋・回想の海洋法』や水上千之氏の『排他的経済水域』に記述があります。

   

 20代に国会議員の秘書をしていましたが、そのとき学んだ条約が「日米安保条約」と「国連海洋法条約」でした。海洋法はまだ条約批准がされていないときだったように思いだします。
 海洋法の紛争解決に関する規定は海洋法第15部http://www.geocities.co.jp/wallstreet/7009/m0008339.htmにあります。
 我が国にも、海洋基本法があり、海洋基本計画が国により定められ、改定の時期を迎えていますが、この課題への取り組みもまた、重要案件ではないでしょうか。


資源は本当にあるのか
 そもそも、尖閣列島に関する中国や台湾による領有権争いの根底には、海底資源をめぐる利権争いがあるというのが根強くあります。(参照:毎日新聞9月19日「水説」)果して尖閣諸島周辺海域は資源の宝庫なのかどうか、調査への動きがあるようですが、この点については、レアアース泥を排他的経済水域内の南鳥島周辺海域の海底で発見したという産経新聞7月23日配信のニュースと、沖ノ鳥島は「島」であり、大陸棚拡大認定勧告を、国連の大陸棚限界委員会が拡大を認める勧告を採択したというこれも、産経新聞の4月28日配信のニュースなどを記憶されている方も多いのではないでしょうか。
 一方で、中国も沖ノ鳥島のデータを集めているというニュースもあります。
 これらの点については、『海底資源大国ニッポン (アスキー新書)』と『太平洋のレアアース泥が日本を救う (PHP新書)』が参考になります。微妙に視点がずれているのですが、レアアース泥発見の当事者と、資源探査を担当している独立行政法人の当事者だけに面白いと思います。

   


 探査担当の本では、海底熱水鉱床に関する調査研究では、カナダのノーチラス社を要チェックとしていますし、一方、加藤泰浩東大教授は、フランスの世界最高水準の海洋資源開発技術をもつシュルンベルジュ、フレシキブルパイプの世界的メーカーテクニッぷというこれもフランスの会社を要チェックとしています。また加藤教授は南鳥島周辺海域でのレアアース泥発見の舞台裏を明かしていてこれも興味深いものがあります。

 海洋の平和と国際協調への仕組みづくりに向けて、一段の本腰を入れた取り組みが必要なことを、いまさらながらに痛感します。






 

海洋基本法、海洋基本計画