食は常温では保存できないことのリスク

人鳥堂の飯島です。意見は私個人のものです。

『食を考える』

 職場に向かう道に、ナスがなっています。夏からずっと、数を増やしたり減らしたりしていますから、きっとこの家の人が収穫しているのでしょう

 写真はつい最近のものです。こんな時期までナスがなっているのも驚きですが、最近読んだ本書には、「農業の出口は食」という記述があり、その記述を読んだときになぜかこのナスを思いだしました。著者は植物遺伝学が専門ですが、総合地球環境学研究所の副所長であり、教授です。次の世代に安心で安全、豊かな食を与えてやるにはどうすればよいのか、という問題意識をもって本書は執筆されています。
 現代の日本の食文化のあり方は、実は石油や水の資源問題でもあり、食文化の多様性が失われることのリスクは意外なところにあることを、本書は教えてくれます。著者によれば、衣食住のうちすでに「衣」と「住」の部分では、文化の多様性をほどんと失っている、と言いますが、異論はありません。今や、衣類を自分でつくる人はほとんどいませんが、食が同じようになっていいのかと著者は言います。その理由が目からうろこで、「衣は常温で保存できるが、食の場合はそうはいかない。食をすべて外部化してしまうことは、わたしたちの生存そのものに大きなリスクを伴うことを忘れてはならない。」ということです。
 そのほか、日本がトウモロコシ文化圏であることや、そのことのリスクや、東日本大震災津波の被害の一つである「塩害」についての指摘など、思わずうなずくことや、情勢の台所からの解放を外食や中食に背負わせ、その分だけ石油を使うようになったことに意味を考え、本来は、その半分を男性が負担するという形で解消すべきであったという、耳が痛いような指摘などにも共感します。