日本の形、戦後の形

人鳥堂の飯島です。意見は私個人のものです。

終熄はるかなり
 ことはまだ終わってはいないという実感です。後を絶たない原発をめぐる情報隠蔽の諸相は、この問題が戦後日本のあり方のひとつの奥深いところに根ざしているように思わせます。そのことをうかがわせるのが、船橋洋一著『カウントダウン・メルトダウン 上』、『カウントダウン・メルトダウン 下』です。

 著者は夙に知られたジャーナリスト、福島原発事故独立検証委員会をプロデュースし、事故調査・検証報告書を刊行しましたが、その作業の過程で、危機にさらされた人々の、渦中におけるそれぞれのストーリーに強くひかれるというジャーナリストの本能に突き動かされます。そして、「危機に際しての日本社会の、そして人間社会の真実をつかみ出したい。物理の絶対的法則と巨大技術にはらまれる背理が人間性と人間社会を破壊しようというとき、わたくしたちはどのようにそれにまみえた、戦ったのか」を、一記者に戻って、「メルトダウンの軌跡をカウントダウンする」取材を始めます。そこに浮かび上がってきたものは、戦後、精神の自立を欠いた安全と安全保障が生み出してきた、いびつな日本の形であり、その歴史的遺制と限界そのものであり、福島第一原発危機は、つきつめれば『日本の「国の形」と日本の「戦後の形」への問いであったといいます。
 さて、ことはまだ終わっていない現実についてはすでに触れましたが、著者の問いに答えることが、終熄に向けた取り組みの必要条件のひとつではないかという思いを強くして、この書を、今読んだほうがいいと思いました。

こちらに、電子版もあります。たしかに軽いです。





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