仕事をする人の”真髄”をみる

人鳥堂の飯島です。意見は私個人のものです。

借りは舞台で利子をたくさん付けて返す
 出るだろうと思っていた本が思っていたとおりに出て、こうだろうなと思う本になっているということは、たまにあるでしょうね。本書、『大滝秀治写文集 長生きは三百文の得』は、まさに、そういう類いの一冊です。

 舞台の役をもらったとたんに、「ああ、また借りができた」と思う大滝さんは、「この借りは、舞台で利子をたくさん付けて返すことが、役者の仕事」だと語っていますが、これは、役者に限らない。仕事をたのまれたときの心構えでなくちゃと思います。フリーでプロなら、なおさら。
 この本には、師匠の宇野さんや滝沢さんとの様々な、役者にかかわるエピソードがたくさんあるのですが、でも、一番感動したのは、大滝少年が、麻疹で楽しみにしていた富士山に、小学校の卒業祝いに登れなくなったとき、おふくろさんが、「じゃ、あたしが代わりに行ってあげよう」と参加した時のエピソードです。帰ってきたおふくろさんが、「秀ちゃん、行かなくてよかったよ」と言う。「ええ?」って聞き返した大滝少年におふくろさんが言う。「行かなくてよかった。行きも帰りも坂ばっかりだったよ。」
 「俳優であったという事実を、自分で確認するために、この本を出す。」とした本書は、そのほか、コップに水を入れ、水を入れ、一杯になって、それでも水を入れ、表面張力で盛り上がった水のような話が満載です。

アマゾンでどうぞ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
新書の棚
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

     




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
文庫の棚
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・