「しょく」の品質が未来を拓く

人鳥堂の飯島です。意見は私個人のものです。


エキストラバージン、本物に出会うのは結構大変だということ
 健康志向というか、食品やサプリメントに対する関心の高さも、今の世相でしょう。私も、朝食に無塩食パンを食べるようになり、これまで以上にオリーブオイルを楽しむようになっています。オリーブオイルというのは不思議な魅力があるようですが、エキストラバージン・オリーブオイル、実は本物に出会うのは結構大変で、ここにも食品偽装の問題があることを知らしめたのが、トム・ミューラー著『エキストラバージンの嘘と真実 ~スキャンダルにまみれたオリーブオイルの世界』です。

 言われてみて、今食しているエキストラバージンが本物かどうか、気になりますね。本物には、苦味や刺激があるというので、その点に留意して、経験とオリーブオイルの品質についての正しい知識を持つことが必要になるということでしょう。日本オリーブオイルソムリエ協会という機関がありますが、エキストラバージンのコンテストを実施していますので、アクセスするのも方法のひとつでしょう。
 最近買ったものは、高くなかったですが、たしかに苦味というか刺激があり、まず納得でした。

もうひとつのIOC
 「IOC」といっても、オリンピック関連ではありません。国際オリーブ協会というのがそれです。1959年にスペインのマドリッドにおいて、EUと国連貿易開発会議が母体となって設立されましたが、ここで国際的な品質規格を決めていますが、本書によれば、この機関は、偽装問題に対処できる機関ではそもそもなくて、かつての役員たちは汚職にまみれたといいます。驚くべき、オリーブオイルの偽装問題は、決して対岸の火事ではないでしょう。
 日本にはエキストラバージンの規格を明確に規定する法律は存在しないとのことですが、本書の解説によれば、JAS法に基づいて1970年に制定された「植物油脂の日本農林規格」13条に規定があるとのことです。これはほぼIOCのエキストラバージン規格を踏襲しているようです。日本にも、優れて品質の高いエキストラバージンがあるようで、新鮮であることを身上にするエキストラバージンなのですから、手に入るまでの時間を考えるとき、もっと国内産のエキストラバージンに注目すべきでしょう。TPP問題も実は、足元での条件整備に目を向けるべきです。


平和で満ち足りた人生のためのたったふたつの問い

 これまでも、これからの成熟社会は、「江戸時代に学べ」みたいなことが言われ、それに関する書籍も数多く出版されています。増田悦佐著『お江戸日本は世界最高のワンダーランド (講談社プラスアルファ新書)』も、そうした書籍の一冊です。

 ただ、ジパングのシニアアナリストの著者は、「結局のところ、平和で満ち足りた人生を送るために重要なポイントは、たったふたつの問いにどう答えるかに尽きるのではないだろうか。『なにを食うか』と『なにをやって食っていくか』だ。」と断言して、終始この視点から語るところに、本書のキモがあります。
 著者は、「食生活」と「職生活」、どちらの問いにも満点に近い答えを出しているように思えるのが江戸時代だ、といいます。食については、和のだし汁、江戸中期以降の高齢社会に合わせた食事、つまりが、我が家の年寄りと同じように、歯が弱ってきたことに対応した料理の工夫が必要だったことから生まれた調味料が、そして、食については、徹底したリサイクルネットワークと分業で、様々な職人と商人が食っていけるシステムをつくりあげ、さらに、芸事、習い事というニッチ産業を隆盛にし、モノからコトへと、見たいこと(観光)、聴きたいこと(ライブ)、やりたいこと(アドベンチャー)という、まるでこれから開拓すべき分野について先鞭をつけていたということになります。
 成長戦略といっても、巨大産業にかかわることは、その筋に任せて、庶民レベル、町人レベルでの、習いたいことや行きたいところの開発すなわち投資と需要喚起が最後は勝負を決めるのではないでしょうか。本書を読むとますますそう思います。
 「観光立国」は、これも、足元にヒントありでしょう。
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