冷徹で現実的な政治家オバマの決断は?

人鳥堂の飯島です。意見は私個人のものです。

ボブ・ウッドワードオバマの戦争』

 実は本書は、サイバー・テロに関連したバックグランドのテキストとして取り上げる予定でした。それは、土屋大洋著『サイバー・テロ 日米vs.中国 (文春新書)』の冒頭に次のようにあったからです。「ウォーターゲート事件の報道で知られるワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワード記者は著書『オバマの戦争』の冒頭で、アメリカのインテリジェンス機関が、大統領選挙で当選したばかりのオバマ候補にブリーフィングする様子を描いている」とありました。

 サイバー・テロについては、別途取り上げたいと考えていますが、今は、シリアをめぐる問題です。

オバマの戦争』では、サイバー攻撃については、イランではなくイラクサイバー攻撃について触れているのみです。それよりも、アフガニスタンイラクでの「ブッシュの戦争」が、オバマ自身の戦争になった経緯が、極めて興味深いエピソードにより読者の前に展開されています。
 現在の中東情勢を踏まえると、むしろ、新たな「オバマの戦争」が始まるのかどうか、予断を許さないときだけに、政権移行時期における、重要閣僚を選ぶという次期大統領としての最初の作業だからこそはっきりと見て取れるオバマ自身の政治の手法を、極秘情報とともに知る最適なテキストというほうがタイミングでしょう。
 著者は、「オバマは、個人的なつながりがないことが政治的資産になると判断したようだった」と、国家安全保障問題担当大統領補佐官を選ぶにあたっての基準と考える側近の印象を伝えています。オバマ大統領の、感傷に溺れることなく非情にもなれ、理詰めで考えて前進の道筋を描くという、リアリストであることが十分うかがわれます。
 とにかく、無関心ではいられないシリアの動向を踏まえてアメリカの動き、国際情勢をかん会える時に、本書がテキストのひとつになることは間違いないと思います。

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