『タネ』後編です

人鳥堂の飯島です。意見は私個人のものです。


小雪 『橘始黄(たちばな はじめて きばむ)』
 橘は、柑橘類、京都御所紫宸殿前の「右近の橘」は、日本原産の柑橘類とされているとのことですが、確か京都御所に行った時に、「左近の桜」とともに見た記憶があるようでないのです。旬の野菜は『菠薐草(ホウレンソウ)』、菠薐は原産国ペルシャ、現在のイランのことだそうですが、最近の人は、「報告・連絡・相談」みたいなことで連想が行くのかもしれませんが、ベーコンと炒めると美味しいですね。アクが強いので、茹でて料理することが普通でしたが、最近は、アクの強くないものが出回っているようですが、これも、『雄性不稔』の種を使っているのでしょうか。

 今日は、トラジャです。『トラジャ』珈琲はかつてオランダ王室御用達の珈琲だったというのですが、一度は衰退し、また復活した品種だということはよく知られています。

 『前編』とタイトルをうってしまいましたので、『中編』とか『後編』とかがないとまずいわけでして、今回は、「タネ」の『後編』です。野口勲著『タネが危ない』は、発見に満ちていて(私にとってですが)面白いのです。
 

 たとえば、人類が最初に栽培したのは「ひょうたん」ではないかという仮説のこととか。土器の原型はひょうたんではないかとか、このひょうたんに水を詰めて持ち歩くことで、アフリカ大陸から、人類は長い旅に出ることが可能になり、植物もまた世界の各地に伝播したのではないか、そして、水だけでなく、「タネを運ぶ容器」でもあったのではないかという仮説には、わくわくします。
 しかも、ひょうたんの「優生」と「劣性」でいうと、くびれたひょうたん型と苦いのは優生で、くびれがなくて苦くない夕顔型のが劣性だというのです。容器にしかならないのが優生で、メンデルの法則で、劣性形質の固定化は3回目の交配で固定化できます。そこで食用になるカンピョウということになるようですが、隠れている性質が出ることもあるようなので、一筋縄ではいかないようですが。ちなみに、メンデルは優生とか劣性とかの意味でたてわけていないので、ここからの誤解は、極めて危ないこともありますね。

ミツバチ消滅現象の仮説

 なかでも衝撃的なのは「蜂群崩壊症候群」つまり、ある日突然女王蜂と数匹のハチを残して、昨日までいたミツバチの大群が忽然と姿を消してしまう現象で、2007年に時事通信で記事が配信されて、その後世界を駆け巡った現象です。著者の直感は「もしかしてタネに関係あるんじゃないか?」というものでした。詳しくは本書を読んでいただきたいのです。
 そして、この仮説は、実は、F1種という、タネ採りのためにミツバチが受粉作業で働かされているという事実から展開されています。著者は確証はないということですが、説得力のある(と、私には思えますが)怖い仮説です。
 

ターミネーターは映画の世界だけではない
 現在封印されている遺伝子組み換え特許に、ターミネーター・テクノロジーというのがあるそうです。どんなものかというと、遺伝子操作によって、タネの次世代以降の発芽を抑える技術で、そうなれば、農家は自分で採種できなくなる、という、種苗会社にとっては誠に都合のいい技術ということになります。「自殺する遺伝子」ともいわれるこの遺伝子は当該植物だけでなくすべての植物種をカバーするというのですから、どんな世界になるのでしょうか。バイオメジャー数社と豆理科、ヨーロッパの各国の動きは、知的所有権のもうひとつの顔だと言えそうです。
 ひょっとしたら、植物が発芽できない世界を作り出してしまうようなバイオアクシデントが起きたらどうなるのか、「悪夢の世界」で、植物の死は動物の死と直結する、という著者の指摘と、その背景になる世界の種苗メーカーの動向にはチェックが必要だと感じます。


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なお、「自殺する遺伝子」については

もあります。あわせてお読みください。