マイケル・モーパーゴ著『戦火の馬』を読む

人鳥堂の飯島です。意見は私個人のものです。

『東の空』・定点眼

冬至『乃東生(なつかれくさしょうず)』

「なつかれくさ」とは、うつぼ草のことです。早朝、あたりはまだ暗く、冬の時期に芽を出すことから、冬至という、1年で一番厳しい枯れた野面に、春に向かう若芽をめざとく見出している「候」に感じられます。
珈琲は「カメリア」原産国はブラジルで、黄色い豆の色からそう名付けられたようです。しっかりした香りと味わいです。

来年の干支は『午』、昨日は「有馬記念」、実は、過去に2回、「有馬記念」であてたことがありました。昨日のオルフェーブルは感動モノでした。テレビで観ているときに、次の一節を思い出しました。
「連隊の先頭に立って、飛ぶように平原をかけていく。ほかに同じスピードで駆け続けるのは一頭しかいない。私と並んで走る唯一の馬は、あの黒く輝く若駒だ。ニコルズ大尉とスチュワート大尉の間で話し合いがあったわけではないが、この馬に負けることは許されないと、直感した。見れば、相手も同じ思いでいる。眼を血走らせ、顔をしかめてひた走っているではないか。」、マイケル・モーパーゴ著『戦火の馬』の一節です。

この小説の主人公は「ジョーイ」という名の馬です。少年との友情、戦争の中での、同僚「トップソーン」の死(もちろん馬です)、エミリーという少女とのこと、そしてそれが入札のどんでん返しにつながることなど、スピルバーグ監督による同名の映画もありますが、小説で、馬の目で見続けた戦場の姿に、人間の目で見るだけではない、人間に限らない戦争に巻き込まれた動物たちの惨状と人間の身勝手さなど、本書は奥深い思いを伝えてくれると思います。今では村の公会堂になっている昔の学校の、十時一分で止まったままの時計にしたの古ぼけた馬の絵、そこに描かれた鹿毛馬、額にくっきりとした白い星があり、四本の脚先はぴったり同じ靴下をはいたように白い、そう、「ジョーイ」です。村にはまだ「ジョーイ」をおぼえている人々がいるが、それもわずかになり、一年ごとに減っていくとき、「かつて戦争があって、人も馬もその戦争のさなかで暮らし、そして死んでいったこと。そうした事柄が忘れ去られることのないように、私はジョーイの物語を描いた。」という作者の言葉は静かにひびきます。


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