集団になると怠ける人とは

人鳥堂の飯島です。意見は私個人のものです。

定点観測・東天


平成26年の始動を明日からに控え、天気は下り坂のように感じます。寒さも一段と厳しく感じます。年齢のせいでしょうか。

小寒 『芹乃栄(せりすなわちさかう)』
 「大寒」よりも寒さが強く感じられるというのも、寒の入り、より寒さが意識されるからでしょうか。
 芹は好きな野菜です。旬の野菜は「蕪」ですが、風呂吹き大根をゆずみそでいただきました。こういうのが、この時期の暮らしの実感です。
 珈琲はマンデリン、ボディーの確かな香りと味がいいと思いました。


『社会的手抜き』ってなんでしょう?
 個人の力量には興味がありますが、集団のパフォーマンスにも関心が惹かれます。そして、集団で仕事をするときと個人で仕事をするときとでは、集団で仕事をするときのほうがパフォーマンスが低下することが知られています。もとろん、ご本人には、サボっている意識はないのですが、「他の人と一緒に作業をしていると思っただけで、人は無意識に手抜きをしてしまう」のはなぜなのか。こんな疑問に答える本が、釘原直樹著『人はなぜ集団になると怠けるのか - 「社会的手抜き」の心理学 (中公新書)』です。

 人数と手抜きに関係はあるのでしょうか。「社会的インパクト理論」というのがあるというのです。人数が増えれば増えるほどパフォーマンスは伸び悩むようにあるそうです。これは深刻な問題をもたらす恐れがあります。手抜きの出現率を20%として、5人では1人の手抜きの出現数が、30人になれば6人の手抜きが出現します。一人のときの失敗確率が26%として、6人の手抜きでの失敗確率は40%近くにまで上昇するといいます。しかし、ここに集団の許容度が関係して、余裕のある集団では失敗の確率は低くなるというものです。つまり、余裕のない集団ほど組織サイズをスリム化する必要度が高いということでしょう。

 「三年寝太郎」の事例や、文化と社会的手抜きの関係、個人主義集団主義、男女の違い、さらには、今気になる中国の集団主義と面子など、興味深い角度からの分析が盛り沢山です。

 とくに興味深いのは、「心の理論」(他者の意図や心理状態について推測する能力)との関係です。かつて取り上げたことがありますが、(『社会脳』についてhttp://d.hatena.ne.jp/auditor28/20131104/1383528058を読んでいただけると嬉しいです)、「社会的手抜きと嘘をつく行為も関連しているかもしれない」という本書の指摘は、思わず、うーん、です。
 さらに、「国家と社会的手抜き」の章では、生活保護の不正受給や国家財政の問題、投票行動などが取り上げられていますが、とりわけ、真珠湾攻撃から考えた「集団意思決定」の問題は、昨今の政治状況も踏まえ興味深い分析に満ちています。
 
とまれ、おさえておきたい一冊です。

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