相対化の視点を手に入れよう

人鳥堂の飯島です。意見は私個人のものです。


定点観測・東天


 雪舞う予報の東の空です。寒さが眼からもしみてくるようです。

小寒 『雉始なく(きじはじめてなく)』
 旬の魚は「鱈」です。鍋がいいですね。旬の野菜は「水菜」、こちらも「はりはり鍋」と呼ばれる鍋もあるようです。
 今日は珈琲は「バリ・アラビカ」でした。ややさらっとした感じで淹れてしまったようです。

東南アジアの国々からは米・中、そして日本を含む国際情勢はどう映るのか?
 安倍首相の「靖国参拝」後の各国の反応については、中国、韓国、そして欧米からの反応は想定の範囲としても、東南アジアの国々からの反応については比較的冷静であるかのような報道も一部にはありました。
 しかし、ホントのところはどうなのか。東南アジアの国々といっても一様ではないでしょうが、一体、米中の関係や日本の立ち位置がどのように映っているのか気になるところです。
 たとえば、昨年の10月はじめ、「インドネシアが中国と、通貨スワップ再開について首脳会談で合意」というニュースが流れましたが、金額にして150億ドル、日本との間では120億ドルの協定です。中国のインドネシアへの接近の狙いは、南シナ海の領有権問題に直接関与しないという地政学的メリットと、2億3000万人を超える人口を有する、東南アジア最大の経済規模をもつことにあるでしょうが、それは、アジアでのアメリカのプレゼンスの低下という現実を踏まえていることもあってのことでしょう。
 「安倍外交」が、安全保障の問題はもちろんのことですが、より、「資源・エネルギー戦略」の色彩が濃い「経済外交」のニュアンスを強くしているときだけに、既に取り上げた、手嶋龍一氏によって、安倍総理と「思想・信条」の重なるとされた谷口智彦氏の著作を取り上げることがポイントのように思えるのですが、その前に、米・中・日の関係を相対化する視点をおさらいしておくことは、「解毒作用」にもなるように思えます。
 そこで、東南アジアからの「視線」をかんがえるのに適切と思えるテキストが、『リー・クアンユー、世界を語る』です。


太平洋とインド洋での海洋戦略の攻防につながる

 「シンガポール建国の父」と呼ばれる、過去半世紀の政治家の中でも異彩を放つ、と評される、リー・クワンユー、彼が、三人のアメリカ人学者(ハーバード大学公共政策大学院(ケネディースクール)教授、外交問題評議会ヘンリー・A・キッシンジャー外交政策上級研究員、ベルファー科学・国際関係研究所研究員ですが)、のインタビューに答えたものをまとめた本書は、これからの20〜30年のうちにアメリカが直面するであろう問題、特に中国の台頭や米中関係、インドの評価などについて、東南アジアの政治指導者がどう見ているのかということを、具体的に知るよすがになっています。
 米中間については、「勢力をめぐっての小競り合いは起こる。だが、それはやがて沈静化するだろう。なぜなら、中国は(自国の発展のために)アメリカを必要としているからだ。」とか、「主要国であるアメリカ抜きの地政学的バランスは、アメリカが主要プレーヤーの座にある今のバランスとはまるで違ったものになっている。」、とか、インドについては、「インドが台頭しないとアジアは没落してしまう」、「バランスを保つためにはもう一つの大国が必要なのだ」とか、「日本とアメリカの二カ国で、経済的、物理的、軍事的に拮抗勢力になることはできる。」が、単独では、「日本は拮抗勢力にはなれない。」という見通しを示しています。
 インドと中国との関係は、太平洋とインド洋という二つの海洋での海洋戦略の絡み合いにもつながっていくでしょうし、それは、実は、海洋国家でもある日本にとっても無関係のことではないはずです。


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