アメリカについて予習、その2

人鳥堂の飯島です。意見は私個人のものです。

定点観測・東天

明日にかけて天候は大荒れの予報ですが、次第に晴天の様子になってきました。

立春 『東風解凍(はるかぜこおりをとく)』
 春の兆しの東風と思いきや、冷たい風が吹き込んで、さくさが一段と厳しく、明日は雪の予報です。旬の魚は伊勢海老だとか。また、旬の野菜は蕗の薹、かみしめるほろ苦さは、様々な意味で、薬です。珈琲はエチオピア、ようやくシトラスの香りみたいなものを感じました。


見えてくるのは『日本企業の脆弱性』の正体

 アメリカと対等に同盟を組める国が、現在の国際社会で存在しないのと同じように、アップルと対等の関係を築けるサプライヤーは今のところ、日本には存在していないですね。そのことを、少なからず苛立ちながらはっきりと思い知るのが、後藤直義・森川潤著『アップル帝国の正体』です。


 帝国には光と影があるのが常ですが、本書を読むと、帝国に支配され組み込まれる側にも、光と影があるとの思いを強くします。ローマ帝国を支えた基幹インフラが帝国に張り巡らされた道路(すべての道はローマに通ず)であったように、大英帝国を支えたインフラが、海底ケーブル(かのロイター社のモットーは、ケーブルを追え!)であったように、アップル帝国を支え維持しているものは、次々と登場する製造技術だけでなく、職人技で世界のどこにもない技術への情報収集、あるいはソフトウエアーの新潮流まで、貪欲に追いかけ呑み込んでいくという、想像性を核にした総合戦でグローバリズムの世界で勝利を続ける、世界をカバーする情報ネットワーク、「インテリジェンス」そのものの、あくなき追求です。
 そのアップルに対峙して、生き残りを図ろうとするなら、アップル参加の利益が続いている間に、次への準備を怠りなくしておくことが求められるでしょう。ここに、『亀山ブランド』しか生み出せなかったシャープの凋落と、研磨技術をアップルの発注でさらに飛躍させた新潟県燕市の研磨職人たちの小企業との、光と影を生み出したのではないでしょうか。
 私が切歯扼腕する思いがするのもこの点です。一方で、世界最強の黒子といわれる台湾、ホンハイ精密工業グループの存在にもうならされます。日本企業の存在感がグローバル経済の中で希薄とされるが、それは、アップルの持つ『プラス思考の貪欲さの努力』が日本企業に欠落しているからではないのか、そしてそれは、企業規模が大きければ大きいほど欠落の度合いが大きいのではないかと思えてくるのです。「その欠落こそが、日本の家電メーカーがめまぐるしく移りゆく家電・IT産業やビジネスのルールチェンジについていけず、凋落の道をたどっていり理由なのではないか。」という本書の記述はまた、日本産業の次代の再生の担い手は「もはや、現在の大手家電メーカーではないのかもしれない。」という控えめな結論表現に至るのですが、「かもしれない」ではなく、「ではない。」というのが実相に思えます。
 しかし、本書を読むと、この『貪欲な努力』の上の、『想像性の泉』が涸れるときには、アップルといえども、帝国の斜陽を避けられないのも歴史の教訓なのかもしれないという、昨今の企業決算に、グローバル経済に与える影響の大きさとショックを検討しておいたほうがいいようにも思えたのでした。


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