国家が劣化するとき

人鳥堂の飯島です。意見は私個人のものです。

定点観測・塀わき


 季節なのか、頑固に消えのこるかと思っていたのですが、案外、はやく消えていきそうです。

立春 『黄鶯なく(うぐいすなく)』
 まさに、”春は名のみ”というところでしょうか。しかし、ウグイスはともかく、メジロは結構見かけるようになっています。むかしは、梅の花などをついばんでいる姿を見つけて、メジロがウグイスだと思い込んでいた時期もあったのですが。この時期、甘いものといえば、「うぐいす餅」でしょうか。青きな粉をまぶした、いかにも上品な餅ですが、好いですね。
 今日は、エチオピア、飲みきりました。さて、明日からの珈琲を、どこで、何を、という考える楽しみが、「食べたり、飲んだりすることばかり考えて」と小言を言われても、やっぱり、いつもの、本源的な、楽しみです。


酒飲みにもうまい菓子
前振りからの続きは、岸朝子=選 逢坂剛=著『お江戸東京 極上スイーツ散歩』です。

 本のしつらえからして、菓子折り風で、洒落ています。よんどころなく、甘いものへと嗜好が傾く中、手を伸ばす本もこの分野のものが無視できないのです。
 菓子というと京菓子がすぐに浮かびますが、土地土地のお菓子に、思い出も、うまさも、詰まっているのでしょう。それを、それこそ、味わうコスモポリタンな立ち位置に東京はあるのでしょうけれど、お江戸東京にも、また、土地土地の極上スイーツがあるというのが、本書の読みどころであり、まずは、お店を訪ねて、逸品の甘みを味わうことから始めたいと思いました。七十二候との関係でいうと、六本木の青野総本舗でしょうか。のし紙に『茶前酒後』という言葉があるとのことですが、つまり、「うまい菓子は茶を飲む前、そして酒を飲んだ後にも食べよ、という意味だろう」と本書が語るように、「豆大福」、「鶯もち」、「五彩饅頭」のどれでもを求めに出かけたいです。
 

インフレは何よりもまず「政治的」現象?

 国会が始まって、安倍首相の唱える「集団的自衛権」をめぐる議論が、活発、加速される状況も考えられますが、スピーチライター谷口智彦氏の著作になかなかたどりつけない日々が続いています。というのも、関連する著作が気になり(たとえば、日高義樹著『アメリカはいつまで日本を守るか (一般書)』など)、その関連する記述は、さらに次の資料へとつながるという具合で、アメリカのアジアにおけるプレゼンスの問題や、それと絡む日本の防衛に関する認識などには、東アジアにとどまらない、バックグラウンドのおさえが必要に思えるなど、収れんするためには、いったん振動する知見が求められるようにも思えます。
 たとえば、日高義樹著の前掲書には、オバマ大統領におけるアメリカ政治の原理の理解のなさについて、「オバマ大統領は資産家や企業家に対して増税しようとした際、次のような演説をしたことがある。「あなた方は、自分で成功して資産を作ったと思っているが、すべては国のおかげだ。国が道路を作ったり港を作ったりしたから経済活動がうまく行って、ビジネスが成功したのだ」正確な引用ではないかもしれないが、オバマ大統領はこういった主旨のことを言った。これは日本や中国、ロシアでならば通用する演説だが、アメリカでは笑われるだけである。」とあります。


これは、ニーアル・ファーガソン著『劣化国家』の結論部分、『オバマが発した定常状態の声』という箇所で、正確に引用されたところと共鳴していたりするのです。

 そして、ファーガソンの著作は、現在のグローバル経済についての理解に通じる認識を与えるものでもあります。いわく、「インフレーションは「いついかなる場合も貨幣的な現象である」というミルトン・フリードマンの名言は、余剰貨幣を生み出すのが誰なのか、なぜそうするのかという疑問に答えてはくれない。実際のところ、インフレーションは何よりもまず政治的な現象なのだ。」となれば、答えを求めようとすれば、「歴史的視点から考えること」になります。新薬を市場に送り出すのにかかる費用にかかわっての「逆ムーアの法則」とは?アメリカ社会における「新しいカースト」と呼べそうな現象とは?
 アダム・スミスの『国富論』でめったに引用されない「定常状態」と呼んだものを説明した2つの節とは?(これがまさに、先に述べたオバマ演説の本質をなすものだと指摘していますが)スミスは言います。「たとえ国富が莫大であっても、国が長期にわたって定常的であるなら、高い労働賃金は望めない。人口の大きな割合を占める労働貧民が、最も幸せで快適な暮らしができるように思われるのは、社会が最大限の富を獲得したときではなく、さらなる獲得を目指して前進を続ける、進歩的な状態にあるときだ」と。
 なにやら、スミスの時代だけでなく今の日本にも通じる状態のような気もします。 
 そして「スミスは定常状態の第2の特徴として、腐敗した独占的なエリートが、法・行政制度を自分の利益になるように利用できることを挙げる。」と著者は引用を続け、スミスの洞察にひらめきを得て、本書を執筆したとしています。
 エネルギー関係のイノベーションが、アメリカのグローバルな軍事展開に与える影響についてのさりげない記述を踏まえて、「インテリジェンス」やテロの問題、安全保障の問題につながり、定常状態とされるアメリカの大状況を踏まえて、ようやく、宿題に向かえるといえるのではないでしょうか。



Amazonでどうぞ

まずは、一服どうですか?


本題に至るより道が面白いです