握手に勝るスピーチ、か

人鳥堂の飯島です。意見は私個人のものです。

定点観測・東天


 雨になり、これで積もった雪が解けてくれたらと思わずにはいられません。

立春 『魚上氷(うおこおりをいずる)』
 さすがに、雪も凍てつく感じがないのは(東京だからでしょうか)季節の動きもあるからではないでしょうか。珈琲も、日本茶も、いつもの水温で淹れています。


政治家のスピーチライターが主人公の小説がありました

 スピーチの復権がいわれたオバマ大統領の選挙ですが、再選以降は、言葉ではなく行動でのつまずき(主には、外交と議会対策でしょうか)で、未熟さがアメリカ国内だけでなく、アジアはもとより、中東を含めて、安全保障について、かなり深刻と思われる影響を与え始めているのではないかという昨今のニュースです。
 それはともかく、日本にあっては、政治家の言葉に、それほどの強い影響力があるのかどうかはともかく、そのスピーチが、政治家が何を考えているのかを知るための材料になることはあるようです。
 このところ、安倍首相のスピーチライターという関心ごとできましたが、ひょんなことから、スピーチライター、それも政治家のスピーチライターを主人公にした小説を書棚に見つけてしまいました。原田マハ著『本日は、お日柄もよく (徳間文庫)』です。


 タイトルからも予測されるように、結婚式でであったスピーチに感動し、伝説のスピーチライターと知り合い、弟子入りするという流れなのですが、そのスピーチライターが政治家のスピーチライターだったというわけで、党首討論の場面や、選挙の演説、国会での本会議質問の場面なども出てきます。
 作者は、フリーランスのキュレーター、また、「カフーを待ちわびて」などの作品で知られる作家ですが、政治家のスピーチライターの世界の、プロの視点を垣間見せてくれます。いわく、「最初の一撃が肝心。それがうまく決まれば聴衆はオフェンス側につく」と。
 もちろん、ラブストーリーでもありますが、「握手に勝るスピーチを書く」というあたりに、ジャンルを問わず、プロフェッショナルの心意気が現れるあたり、作者の経歴をうかがわせるように思いました。本当に弱っている人には言葉ではなく、寄り添う人が、そして、本当に歩き出そうとしている人には、誰かにかけてもらった言葉が何よりの励みになるようなスピーチ、そういう政治家のスピーチがあってほしいですね。その世界にいたものとして、いま、その周辺にいるものとして思います。
 面白くて、「スピーチの極意十箇条」などもあり、ためになるひともいるのでは。


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