文具と、「東京物語」と、困るよなあ、こういうの

人鳥(ぺんぎん)堂の飯島です。意見は私個人のものです。

定点観測・東天

 様子のいい空というのがあって、そういう空に出会うと、今日はいいことがありそうな気がするのです。

啓蟄 第八候『桃 始めて 笑く』

 風は冷たい朝でしたが、日差しはまさに、時候通りと言うべきでしょうか。

今日の珈琲

 今日は、「キリマンブレンド・炭火焙煎」というのになりました。癖はないですね、炭火焙煎にしてしまうと。


困る本です

 出会ってしまうと困る本というのがあります。嫌なのではなく、自然に心が弾んで、つい、時間とお金の散在につながりかねないという。そう、私の場合、文房具に関する本が、そういう困る本のひとつなのです。そして、いつでも、目がその場所に行ってしまって、発見してしまうのです。土橋正著『文具上手』も、あれというところにあって、つい手に取ってしまったのでした。

「お気に入りのペンに頼りすぎない」、「道具を使っていることすら意識させない」、「手にするものは無意識でも使える道具のほうが、それこそタップリともがける」、「あえてごく普通のペンを手にする」、12人の様々な人々を取材していますが、その「取材後記」における筆者の言葉の一部です。
 達成すべき「仕事」ではなくて、達成のための「道具」が好きなんですから、私の場合。つまり、「文具上手は仕事上手」でもいいし、「仕事上手は文具上手」でもいいのですが、私の場合は、「文具上手は仕事下手」ならまだしも、どちらも下手だったりする恐れがあるんですけど。それは、たぶん、結構頻繁に文具スタイルを変えているからではないかと思ったりしてみますね。特に、こういう本を読むと。だから、困るんですよ。


れっきとした東京ですよ、ここも

 と、言いたくなるのです。普通列車しか停まらない小さな駅(だからJR中央線中野駅はだめということ)で降りて、その駅前に広がる街を歩いてみるという本が、カベルナリア吉田著『旅する駅前、それも東京で!?』です。嫌いじゃないですね、こういうの。

 もっとも、私としては、ペンネーム(だろうと思います。違っていたらすみません)にも強い関心がありますが。JR青梅線石神前」駅からはじまって、京成本線「江戸川」駅まで、ディープな、どうするんだ、という掛け声の聞こえて来そうな、「旅」の記録です。この中で、私が降りたことのある駅は、地下鉄丸ノ内線方南町」駅と、京浜急行線「梅屋敷」駅、かな。そして、行ったことはないですが、思わず泣けたのは、映画『東京物語』(小津監督ですよ、小津監督)、長男が医者を開業している、「内科小児科平山医院 スグ此ノ土手ノ下」という看板があった駅、東武伊勢崎線「堀切」駅の記述です。
 「『東京物語』は昭和28年公開。撮影時から60年近くが経っている。なのに。ホームから望む風景は、土手だった。ひたすら土手。土手の向こうを荒川が流れ、水門がやや高くそびえる以外、これと言って背の高いものは見えない。空が広い。湿りけを含んだ風が吹いてくる。そして土手を駆け抜ける、子ども。目の前に広がる風景は、映画の中のモノクロ場面と大差ない。」
 映画のシーンそのままの風景の描写、これだけで、この本の価値は、私にとっては決まりですね。

 「『旅』は遠方に限らない。自分が住む場所の近くでも、未踏の地に一歩を踏み出すのは勇気でが要り、その先には発見や感動が必ずある。」という筆者の言葉は、旅以外にも通じるものです。時に、人は、思いがけない情景や場にめぐりあい、人生の面白さをかみしめることもあるのでしょう。


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