道具の魅力、『鑿大全』を読む

人鳥(ぺんぎん)堂の飯島です。意見は私個人のものです。


春分 第十二候『雷 すなわち 声を発す』

 先日も、春雷がなり、春の嵐のような雨が降りました。しかし、桜は散らずに、見ごろを迎えています。
 今日の珈琲は「グァテマラ・サンタバーバラ」です。中南米の豆は、最近のブームとコウキ君が言っていましたが、確かにおいしいし、珈琲感性の良さみたいなものを感じます。
 朝の写真は、たぶん、「巻雲」の一種の「肋骨雲」ではないかと思います。しかも、天気の予報にはあまりかかわらない(天気予報に関係することは『観天望気』というのだそうです。)晴巻雲の一種ではないでしょうか。あるいは「羽根雲」でしょうか。それとも、「巻積雲」の「尾流雲」かなとか、漠然と写真を撮るだけでなく、深刻に考えるわけでもなく、雲について考える、そんなちょっとした時間のや、出かけてふと空を見上げて、おやっと思った時にあると嬉しいのが、岩槻秀明著『雲の図鑑 (ベスト新書)』です。


 これもふとしたことから手にとった本ですが、自然体で疑問がわいたら開いてみるという類の本でしょう。著者は、植物や昆虫、気象学など身近な自然に関する著作や、天気予報士として知られています。天気の変化につながる雲もあることですから、案外、面白いかも知れません。失敗すれば、ずぶ濡れになることもあるかもしれませんが。


出来上がれば陽の当らない仕事の道具

 かつて、鑿を使った刻み仕事と呼ばれる組手や仕口の仕事は、経験豊かな熟達者が分担させられたそうです。しかし、その仕事は、「出来上がってしまえば人目に触れない部分の細工になり」その、「文字通り陽の当らない分野であるという色合いを、刻み仕事にも、そして使用される鑿という木工具にも染めこむことに」なるわけで、現在、叩き鑿も玄能も不要になりつつある現場ではあっても、いや、だからこそ、職人でもない私に、こういう本が手招きするのです。大工道具研究会編『増補改訂 鑿大全: ノミの使いこなしを網羅した決定版』は、「大工道具研究会」に関する興味とともに、鑿という手の延長の道具に対する、知恵と技の、職人世界を教えてくれる、一種のワンダーランドの案内書です。

 しかも、全くの興味、好奇心だけというあり方というところに、ひそかに「フフフ」というものもあることを勘づいてはいるのですが。各地の、歴史上の名工や、道具としての進歩の歴史など、叩き鑿という言葉からもわかるように、強度への工夫など、汲めども尽きないとは言いませんが、面白い知見に満ちています。まあ、「ものづくり大国」、などと、したり顔で言うむきも、知っていていただけたら嬉しいでしょうね。


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