私の「エネルギー基本計画」を持とう

人鳥(ぺんぎん)堂の飯島です。意見は私個人のものです。

清明 第十四候『鴻鴈(こうがん)北(かえ)る』

 雁が北に帰る時節ということですが、「雁風呂」のことを思い出します(洋酒の宣伝にありました)。
 今日の珈琲は「マンデリン」、わりと上手く淹れることができました。


”電力自決の時代”の条件

 あいかわらずエネルギー資源が戦略的な手段として有効であるのは、ロシアのプーチン大統領の余裕をみるとよくわかります。アメリカもシュールガスで、エネルギーに関する地政学的位置づけがシフトしたという識者もいます。
 さて、日本のエネルギー政策とそれを相関的に規定し、また、される、今後5年間のエネルギーについて、基本計画が閣議決定されました。この計画については、様々な議論があるところですが、政府の計画とともに、ユーザーである、私たち国民一人ひとりの「私のエネルギー計画」の策定と、判断が求められる時代になっているのではないでしょうか。
 スタンスの変更を促したのは、東日本大震災福島第一原発事故であることは、明らかです。「しかしながら十分な情報がなければ、ユーザーが本来できるはずの選択を制限されることがあります。社会の行く末が決まろうとしている今、私たち国民はもっと積極的に情報を手に入れ、活用し、より賢く電力を使わなければならないのではないでしょうか。それが、誰にとっても便利で暮らしやすい社会を実現する原動力になるはずです。」という、著者の言葉にはうなずかされるものがあります。
 
 さて、『不等率』という言葉をご存知ですか。池田元英著『電力情報イノベーション』には、この『不等率』が電力会社の利益の源泉と示しています。



詳しいところは本書にお任せするとして、つまりは、契約電力全体の発生時のタイムラグによる、基本料金の中の発電料金と実際の電力使用量の差がその意味で、ピークを想定した契約電力量と最大需要との間には当然差があります。そうでなければ停電してしまうわけですから。
 しかし、良く考えれば、これは供給側の論理でもあります。著者は、需要側からは、集合住宅の場合など、一括契約によるギャップの解消と料金の引き下げが、需要予測や代理購入制度の利用などによって可能になってくると言います。それは、結局は、社会的にもメリットのあることでもあります。


再生可能エネルギーへのシフトにはぶれないエネルギー政策が

 安定性に難があるとされている再生エネルギーですが、著者によれば、再生可能エネルギーへのシフトは可能だと言いますが、そのためには、「大前提として、国のエネルギー政策の方向性をしっかり示すことが必要」というのですが、果たして、この要請を満たす計画になっているでしょうか。
 さらに、実際に、業務として携わっている強みから、実戦的知見が豊富な本書には、意外性に満ちた知恵が沢山述べられています。たとえば、電力の効率的な利用には、「運用改善と調達改善」が、「設備投資」は最後の手段というのもあります。設備投資と電力使用の低下による投資の回収というような発想になりがちですが、投資対効果が高いのは、運用、調達、設備の順だそうです。
 未来社会のライフスタイルを決めるのは「スケジューリング」だというのが、本書の一つの結論だと思いますが、さらに、可能性を秘めた都会のやめについての記述もあります。そういえば東京都が「東京ソーラー屋根台帳」http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2014/03/20o3q100.htmの公表を開始したことなども思い浮かびます。
 さまざまな選択が可能になる情報イノベーションに期待したいですし、私は、合成の誤謬を避ける道は多様性の実現」にあるという思いつきを持っていますので、本書の志向は共感できます。


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