渡るには、結構勇気がいる「橋」もある

人鳥(ぺんぎん)堂の飯島です。意見は、私個人のものです。


立夏 第二十候『蚯蚓 出る』

 いよいよ、初夏の雰囲気です。はやいと思うか、ようやくと思うか、その人の人生の置かれた位置によるのかもしれません。
 今日の珈琲は、「モカ・グァテマラ」のブレンドです。


「橋」、”こちら”と”あちら”をつなぐもの

 場所だけでなく、人もつなぐ、「橋」もありますが、ここで取り上げられているのは、現実の「橋」ですが、「物語」は、寓意と人間の根本的なありかたについての教訓に満ちています。中野京子著『中野京子が語る 橋をめぐる物語』は、北海道新聞夕刊に連載された31話をまとめたもの、なお、本書あとがきによれば、現在も連載は継続中とのことです。



 「どの民族おいても、橋に対するイメージはだいたい共通している。橋は二つの異なる世界、日常と非日常、此岸と彼岸を結ぶものであり、人生の困難の象徴であるとともに乗り越えねばならぬ試練、また転換点であり、戦争における最重要地点、出会いと別れの場、ドラマの生まれる舞台である。」のですから、橋をめぐる物語が面白くないわけはないのです。
 しかし、橋が一方通行でないということは、大事なことですが、案外意識していないのかもしれません。自分が今立っている、こちら側のことが向こう側に行くだけではなくて、向こうからだって、その立ち位置に係る何かが、橋をかければ流れ込んでくるということです。

 まあ、難しいことを底流に流しながら、面白い物語を読むことが、読書の楽園のありようの一つと考えれば、本書はまさに面白いエピソードと考えれば多彩、絢爛(形容としては変わっていますが、辛気臭くないので)たる教訓を引き出すこともできます。
 私は、『鳴門ドイツ橋』の物語が好きですね。1919年、鳴門にあった「坂東俘虜収容所」のドイツ人が建設した橋です。所長の松江豊寿陸軍大佐は会津藩出身、ドイツ兵は志願兵であった、戦後日本にそのまま残ったドイツ人が150人以上、「ユーハイム」、「ローマイヤー」の創業者がその中にいたということ、などなど。
 知らないことがいっぱいの、読書の喜びに満ちています。

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