お金持ちのNHKについて考える

人鳥(ぺんぎん)堂の飯島です。意見は、私個人のものです。


小満 第二十三候『紅花 栄く」

 梅雨が近いのでしょうか、雲が重く感じます。花の写真は、杉並の成田西の近くでものだったと思います。「オンザロード」というテーマで写真を撮ろうと思っていましたが、さまざまあって、しかし、予定通りに写真を撮り続けていこうと、昨日、決めました。ほかのことと一緒に。

 今日の珈琲は、「キリマンジャロ」です。


受信料が6387億円(平成24年度)

 NHKの会長人事やその発言などで、何かと批判的に見られていることが多いNHKですが、その受信料が、6300億円を超えるとは、結構な驚きですし、その会計原則が、あの東京電力と同じ、「総括原価主義」であることなどは、案外知られていないのではないでしょうか。あまり触れられたことのなかった巨額な予算の使われ方や財務内容について、また、受信料のしくみや営業手法の変化を含めたリポートで、知らなかったNHKについての事実を知ることができる、小田桐誠著『NHKはなぜ金持ちなのか? (双葉新書)』は、いま時に読んでおきたい本の一冊です。


 この「総括原価主義」について、取材当時のNHK営業局長が語った発言が本書にあります。電力会社と同じ『総括原価主義』を基本に運営されるので、「年度単位の必要な支出と将来のリスクに備えた一定の内部留保を超えた額(収入)は、本来徴収をしてはいけないのです。つまり、料金をいただき過ぎてはいけないわけです。」と、極めて妥当な発言をしているのですが、一方で本書は、「電力会社がこの方式を最大限に活用して人件費や福利厚生を手厚くしてきた」ことに触れ、「労使折半を原則とする企業・団体が目立つ健康保険料に関し、NHKでは経営側が62%を負担してきた」と書いています。
 本書は、財務、経営の視点から、「私たちが支払っている受信料の行方と最新の受信料事情を中心に、いま話題になっている、巨大組織の最高意思決定機関である経営委員会の委員や執行機関トップの資質や選考の実態、NHK改革に向けた私案をまとめた」もので、著者の経歴からもうかがわれますが、適任の書き手でしょう。

放送法33条とは?

 NHKの国際放送については、放送法33条に規定があって、それによれば、総務大臣が、「放送区域、放送事項その他の必要な事項を指定して放送を行うべきこと」を命じることができること、また、そのための費用は国が負担すると定めていることを本書で知りました(なんという、うかつ)。まあ、この規定はあっても、時事、国の重要施策、国際問題に対する政府の見解の3項目を柱に、「抽象的な表現にとどまっている」のが通例であったものを、第1次安倍内閣の菅総務相(当時)が、はじめて、「北朝鮮による日本人拉致問題」と具体的な事項を指定して命令したエピソードが紹介されています。
 知らなかったことがいっぱいですが、NHKの財務の特徴については、現金獲得能力が高い(受信料が6300億円を超えているわけですから)のに経営事業収益は減少傾向にあること、減価償却費が大きく、加速度償却が行われている可能性があること、有形固定資産が過大なこと、キャッシュフローが潤沢なこと、自己資本比率が高く、金融資産が有利子負債を全額返済してもなお、4000億円程度あること、などを挙げています。
 これを、受信料と総括原価主義の会計原則の上から読み解くと、どんな姿が見えてくるのでしょうか。著者の改革私案とともに、是非一読再考してみたいです。



Amazonでどうぞ