『ムーミン』、崩壊から再生への物語

 ぺんぎん堂の飯島です。意見は、私個人のものです。

芒種 第二十六候『腐れたる草 蛍と為る』

 梅雨の晴れ間です。蛍と言えば、かつて訪れた三島でも、蛍は舞っているでしょうか。旬の果物は『枇杷』、好きな果物です。

 今日の珈琲は、「ブラジル・コロンビア」のブレンドでした。

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熊沢里美著『だれも知らないムーミン谷
ぼくたちはなぜ、ムーミンが好きか

 「ぼくは」というと、軽く人の頭をぶって、「ぼくじゃないだろ、おれだろ」という友達がいました。いまは、もういないのですが。
 ところで、この場合は、やっぱり、「おれたちは、」ではなくて、「ぼくたちは、」だろうと思います。ぼくたちはなぜ、「ムーミンが好きか」、答えは、実は、深いところにありました。
 東日本大震災後、ムーミンのアニメや原作に関心が集まっていると言います。しかし、本屋の店頭で見たムーミンの原作本は、アニメでよく知るムーミンとは違った姿で、ちょっと怖そうな感じがしました。そして、原作とアニメとの間には、いくつもの謎があったのです。それを教えてくれるのが、熊沢里美著『だれも知らないムーミン谷』です。



 登場人物(?)の多くが孤児であったことを知っていましたか?そして、ムーミン屋敷が一度災害を受けて流され、ムーミン谷で再建されたことは?アニメの世界は、実は、原作の、一度崩壊した世界が再生された世界での物語だということは?
 ぼくは知りませんでした。

 自然との共存、他者との共存、言葉はなじみのものですが、ムーミンの世界もまた、この困難なテーマの超克の物語だと知ってから、なんでいま、再びムーミンに関心をもったのか、ぼくたちの表層ではなくて、奥深い命のありようがささやいていると思えてなりません。「長い放浪の果てに、見知らぬ谷にたどり着き、そこで家族でも友達でもない、赤の他人と暮らし始めることになります。」という文章や、過酷な自然条件ゆえに抱え続ける根源的な問題、さらに、現在の世界を続けるための「カンテラ」の光とそのための限られた油、等に、いまの世の中とのアナロジーを読み取るのは容易でしょう。否、安易すぎると言われるかもしれませんが、どうしても、そういうことを考えてしまう現実が、「いま、そこにある」のではないでしょうか。

 見回すと、ミーやスナフキン、ヘムレンさんに良く似たやつがいます。後輩のおやじさんは、ムーミンパパにそっくりでした。身近だったのに、これまではよく知らなかった、ムーミンの世界、本書を手掛かりに、いろいろ考えてみるのはどうでしょう。


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