「和風」は「和」そのものではない

ぺんぎん堂の飯島です。意見は、私個人のものです。

夏至 第二十九候『菖蒲 華さく』

 小田原城の菖蒲です。むかしの写真です。
 旬の魚は鮎ですが、塩焼き、蓼酢で。貴船の川床は、いつ行けるかわかりませんので、我が家で食せることを考えてみようとおもいました。
 今日の珈琲は「トラジャ」です。


日本の伝統的な「知恵と技の世界」は、日本経済のフロンティア

 最近、表装に関心を持ったこともあり、リタイアした職場の先輩の方が所属する書道の会の展覧会に行ってきました。本紙の書と表装が一体となって、作品があるということを、改めて確認しましたが、先輩のそれは、先生のそれを除くと、表装の仕立ても際立って見事で、感性の良さを示していました。
 表装には、「真・行・草」という仕立てに関する様式の言葉がありますが、同じ言葉を、建築についての本を読んでいて、見つけました。日本建築の、部屋のしつらえ、格式をあらわすものとして、どのような客を迎えるかなどにより、「真の部屋」、「行の部屋」、「草の部屋」があり、それぞれを体現する、床の間の作りから調度までが決まってくるのだそうです。今里隆著『屋根の日本建築』によれば、和風建築と日本建築とは断然違うものなのだそうです。



 「最近は『和風建築』という言葉をよく耳にするが、日本建築と和風建築は似て非なるものである。」、「伝統の知恵と技術に裏打ちされたものでなければ、日本建築と呼ぶことはできない。」という著者は、また、「建築家は一代限りの仕事だと、私は考えている。」とものべているのですが、その語るところに耳を傾け、レトロ洋館だけでなく、日本建築がなぜそのようなすがたをとってきたのか、その中の日本人の暮らしに想いを馳せることも、これからを考える一つのよすがではないかと思います。


 まあ、そんなことで、表装の世界について関心を持っていましたが、昨今は、表装屋を主人公にした、古書店の女主人を主人公にしたミステリーと蒲柳の質の若旦那と妖怪たちが活躍する謎解き時代劇小説を合わせたような、行田尚希著『路地裏のあやかしたち―綾櫛横丁加納表具店 (メディアワークス文庫)
』に行き当たりました。


 すでに、3巻まで出ています。私がこの本に注目するのは、邪道かなと思いつつも、表具師という仕事について、若者たちが、古書店に仕事としての関心を持つことが多くなり、古書店をやり始めていることに、上記の小説が貢献しているところもあるのではないかと思ったからです(「おもいつきでしょ」という後輩の声も聞こえてきそうですが)。本当は、日本の「持続戦略」を考えるもう一つのダイアリーで取り上げるべきかもしれないのですが。

 それと、女表具師ということでは、この人の本もあります。尾形璋子著『女表具師 技術泥棒攻防記』です。


 若い人に限らず、前掲書のバックグランドを承知して読むためにも、表具師の技とか、表装のあれこれを知るのは、大事な点でしょう。



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