『高齢者が働くということ』を読む

ぺんぎん堂の飯島です。意見は、私個人のものです。

大暑 第三十六候『大雨(たいう) 時行(ときどきにふる)』

 今日もまた、強烈な暑さの予報が出ていました。すでに部屋の中は、30度を超えています。仕方なくクーラーを。でも、思わず見上げた空は、雲の様子、青い空の色など、いつの間にか、秋の気配の、そのまた先駆けのような感じがかすかに、しかし、確実に感じられます。夏もすでに盛りを過ぎたということでしょうか。
 今日の珈琲は「グァテマラ・キリマンジャロブレンドです。何か刺激的な感じがほしかったので。

『NCISギブス特別捜査官』の父親のような人の姿が思い浮かびます

 生き生きと働く高齢者の姿が、いかにもアメリカの地方都市の中小企業という印象で、本書を読んで、FOXテレビで放送している『NCIS』の「ギブス特別捜査官」の父親の姿が思い浮かびました(残念ながら父親役を演じていた俳優さんは先般亡くなったようです)。
 日本にもこういう会社は地方に必ずあるはずだというような、あるいはあったら好いなという思いが強くします。
 ボストン郊外、ニーダムにある、ヴァイタニードル社、ここでは、製造部門の工場で働く40名の半数が、74歳以上の高齢者という、アメリカ東部の家族経営の会社です。人類学者のケイトリン・リンチ著『高齢者が働くということ---従業員の2人に1人が74歳以上の成長企業が教える可能性』には、これまでの考えであれば、引退してもおかしくない年齢の人にとって、働くとはどんな意味を持っているのかが、従業員へのインタビューを通じて語られています。

 本書を手にする人は、大概、ある種の方向性を持っていると思います。日本の高齢化、少子化の進展の中で、先送りにしてきた問題に否応なしに直面する時が眼前に迫ってきて、さて、どうなるのかを、ご当局にお任せするだけでなく、一度自分なりに考えてみようというひそかな想いというようなものですが。
 日本でいえば、「後期高齢者」にあたる年齢の人が働くヴィタニードルは、熱心に働くそれらの人々、そして会社としての業績も良いのはなぜかを本書は探っていくのですが、著者の判断は、この事例について、再現には否定的ですが、しかし、ヒントはある、というものです。安易な希望観測でないところがいかにもですが、読んでいて、これは、ある意味両刃の剣だなという印象も持ちました。
 先に言いましたが、何らかの政策的意図を持ってこの会社を取り上げることは、十分ありうる、ということです。その政策的意図は必ずしも、心地よいモノとは限りません。事実、本書のなかでも、ヨーロッパからこの会社を取材に訪れたジャーナリストの例をあげて、そのことに、著者自身が触れています。フランスの年金支給開始年齢の引き上げにつながった動きなどです。
 
 個人の働きたいという意欲を満たせる社会と、社会としての様々な課題、たとえば世代間の雇用の分かち合いや社会保障制度のあり方など、高齢者が働くということには、手放しによしとするだけでは済まない、知恵を必要とする課題もあることを知らせてくれる一冊です。そして、ことがポジティブな結末へと結びつくような手立てと、『私』としての生き方を考えてみることを促されました。


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