なぜ、ポテトチップスは食べ始めたら、やめられないのか

 ぺんぎん堂の飯島です。意見は、私個人のものです。

立秋 第三十八候『寒蝉(ひぐらし)鳴く』
 

 台風被害の爪痕を残して、時候は立秋、早いものです。
 今日は、珈琲は「キリマンジャロ」です。旬のさかなはイナダだそうです。やさいは冬瓜、蟹肉あんかけなど、いいですね。


『塩分』、『糖分』、『脂肪分』の「至福のポイント」

 食をめぐる問題は、じつは、キャスティングボードは私たちが握っているという物語です。

 1999年4月8日、米国ミネソタ州ミネアポリスで極秘の会合が開かれました。その模様から本書、マイケル・モス著『フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠』は始まります。


 集まったのは、合わせて70万人の雇用と年間2800億ドルの売上をもつ、米国最大規模の食品メーカーのトップ11人。極秘の会合の議題はただひとつ、「肥満の急増とその対策」でした。


 さて、あなたは、食料品を買うとき、それが生鮮食品なら産地を、加工食品であれば、陳列されている棚からパッケージを手にとって、裏返して、そこに記載されている成分表示を確認するでしょうか。私は、特に塩分については、ナトリウムの食塩換算もおぼえたので、チェックしています。しかし、塩分控えめの食品は、脂肪の割合は高くなっていないでしょうか。当分控えめのものはどうでしょうか。砂糖ではなく「異性化糖」は使われていませんか。
 じつは、「糖分や塩分や脂肪分の配合量がある値にぴたりと一致していると消費者が大喜びするというポイントがあり、業界内部の人々はこれを至福ポイントと呼んでいる。」というわけで、糖分も塩分も脂肪分も、その値までは使われて、加工食品はつくられている、ということです。
 そして、この「至福ポイント」の発見には、回帰分析や複雑なグラフなど高等数学が駆使されているというのですが、これはまるで、ウォールストリートの投資理論や金融派生商品の開発に高度な数学が駆使されていることなどを、想起させます。
 食べ物はいまや「工業製品」であり、「加工食品は魅力を最大限に高めるという意図のもとで設計されているというほうが適切だろう。」というのが現状で、しかも、「人が糖分を好み、欲してやまないことは、今に始まったことではない。」といわれているように、生物学的、心理学的なしくみを、私たち自身が持っているということもあるのです。
 なぜ、「やめられない、とまらない」ということが、スナック菓子を食べ始めると起きるのか、本書を読むと、うなずけます。そして、嗜好はつくられる部分もあるということも。
  そうして点からも、ここで、本書の訳者あとがきで強く勧めている、著者と『ニューヨーク・タイムズ』紙のビデオジャーナリスト、ゲイブ・ジョンソンが共同で制作した報道ビデオ「Food Fight」を紹介しておきましょう。フィラデルフィアの小学校が児童の食事改善プログラムに取り組む活動を追ったものです。
http://www.nytimes.com/video/us/100000000727556/thsugarfix.html?playlistId=100000002138834®ion=video-grid&version=video-grid-thumbnail&contentCollection=Gabe+Johnson&contentPlacement=11&module=recent-videos&action=click&pgType=Multimedia&eventName=video-grid-click

 そして、塩分と糖分と脂肪分については、経済原則が働いているということです。「食品業界がなぜこれほど塩分・糖分・脂肪分に頼るのかもはっきりわかる。この三つの成分は安い。そして互いに補い合う。」と著者が喝破するところを踏まえ、さて、わたしたちはどうするか。「本書の狙いは、食品産業に存在する問題や戦術を読者に伝えること、そして我々は無力ではないと知ってもらうことだ。こと食品の買い物に関して、選択権は私たちにある。」のですから、私自身は、本書が、著者の望むように「食料品店のドアを通るときに自分を守るツールになること」が、食品をめぐる昨今のグローバルな問題の発生を少なくしていくことにつながるのではとも思うのです。


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