本を読んで出かける。捨てたりしないで。

ぺんぎん堂の飯島です。意見は、私個人のものです。

処暑 第四十一候『天地 始めて 粛(さむし)』

 まさにこの通りの天候です。旬の果物は「無花果」。子どものころによく、近所の樹からもぎ取って食べました。あの白い樹液は、肌につくとかゆくなったのを覚えています。魚では、ハゼの季節を迎えるようです。ところで、最近猫に寛容になったせいか、こんな場面に出くわすことが多くなりました。「さて、おりたものか、どうするか」思案顔でした。


『東京本』にも名作?があります

 『京都本』に比べると、『東京本』というのは、ちょっと不利な気がするのは、私だけでしょうか。京都というのは、どこを取り上げても京都なんですが、東京は、東京という横断的なくくりが、感性の次元でやりにくいような気がします。多様性と巨大さで、それぞれのまちの面白さは、東京共通の何かで染められていない気がします。江戸以来の歴史の厚みと、平安京以来の歴史の厚みや、文化がそれぞれ、まちの見えそうで見えない構造と景観ににじみ出ているようでもあります。
 それでも、お薦めの『東京本』はあるわけで、南陀楼綾繁著『谷根千ちいさなお店散歩』もその一冊です。




 『東京本』の名作の一冊に数えられるのでは、とすら思っているのは、「1995年に谷中に引っ越して以来ずっと、谷根千の周辺で暮らしてきました。」という、旅人ではなく、暮らしを営む人としての筆者の目線が、地についたものと感じることです。筆者はいまさら言うまでもないことでしょうが、「不忍bookストリート」、「一箱古本市」知られ、「ナンダロウアヤシゲ」というよりは、「ナンダロウタノシゲ」と、私には映ります(失礼)。かつて、中野サンプラザの広場でやっていた「古本市」、天候もあって、やがてロビーでやるようになりましたが、その後どうなったのでしょうか。「まちづくり」としての貴重な資源と言っていた、ある審議会でご一緒した大先輩もいらっしゃったのですが。
 また、本書は、紹介されているお店が、所在地順に並んでいるわけではなくて、「日暮里駅、千駄木駅根津駅を基点として、それぞれのお店を配列しています。」ということで、「カワナカユカリ」さんの地図としてもよくできた、わかりやすくて楽しいイラスト地図を組み合わせて全体をつかむという作業もできるので、試してみると、よくまあこの地域に集結して、魅力的な場所があるなと思うでしょう。
 とりわけ気になるのは、『貸しはらっぱ音地』です。ここはまだ存在しているうちにみておきたいところです。現在、一日2千円で貸し出しているというのですが、偶然ネットで見つけた16坪ほどの土地を「何も建っていないまま、この土地を誰かに利用してもらおうと考えたんです。」ということからはじまった「はらっぱ」ですが、個人の表現活動をサポートする場を提供したことが評価されて、2012年に日本建築士会連合会のまちづくり賞優秀賞を受賞しているそうです。

 涼しくなったので、ぶらりと出かけて、「夕焼けだんだん」に立ってみようかと思います。



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