『大統領のリーダーシップ』が語るもの

ぺんぎん堂の飯島です。意見は、私個人のものです。

大寒 第七十二候『雞(にわとり) 始めて 乳(とやにつく)』

 予報通りに雪が降ってきました。もう、けっこう道路にも積もっています。
 季節のやさいは「セロリー」ですが、最近は食卓にのぼることが多くなりました。
 今日の珈琲は、「ブラジル」です。やや冷めたころ、奥に隠されていた味わいが感じられます。


一国のリーダーそして、安全保障の新たな課題

 私たちの暮らす日本という国のリーダーについて、改めて、真剣に考える時期を迎えているように思えます。そして、手がかりになると思うのが、ジョセフ・S・セイ著『大統領のリーダーシップ』です。



 著者についてはいまさら多言を要しないでしょう。『ソフト・パワー』で知られる著者は、しかし、柔らかな分析をしているわけではありません。「アメリカは自国の大統領に強い関心を持っている。また、世界政治におけるアメリカの卓越的地位を好ましいと思っている。」という文章で始まる本書は、そのアメリカの卓越性が大統領によるリーダーシップとどのようにかかわるのかを、歴代の大統領を分析することで検証しています。意外なことは、対象になっていない大統領にジョン・F・ケネディがいたりするのですが。
 まあ、本書を読みかけたときには、オバマ大統領に少し甘いのではと感じる部分もあったのですが(オバマ大統領の外交面での批判が強い時期であったこともあるのですが)、キューバに対する対応も含めて、最近のオバマ外交をみると、的確な評価であったとも思えますが、特に、『日本のレーダーに求められる仕事』と題された、日本語版への序文を読むと、著者の、あるいは米国の知識人の考え方のひとつの典型を示しているようにも思えます。
 その序文で、「日本のリーダーが直面する課題」について、セイ教授は、安全保障の面での「地政学的」なリスクについて指摘し、日本のとりうる安全保障上の4つの選択肢を示します。そして、この先数十年のうちに新たな挑戦を生み出すであろう、北朝鮮、中国の動向など日米同盟を取り巻く3つの変化を挙げていますが、私の考えでは、三番目の、「日本とアメリカは世界的に広がる伝染病、テロ行為、破綻国家からの大量破壊兵器の流出など、両国の極めて重要な利益に対する新しい、国境を越えた挑戦に立ち向かわねばならないだろう。」という指摘です。「安全保障は単なる軍事を超えた新しい特質を帯びるようになりつつある。」という言葉の含蓄も含めて。
 著者の、日本のリーダーたちに期待することは「日本がグローバル・シビリアン大国(世界民生大国)になり、「安全保障を補強する安定というグローバルな公共善に貢献すること」だという表明は、いかなる含意を有しているのか等、考えることの多い一冊ですが、これらの言葉のとおりの世界が、今まさに進行している、との想いを抱かざるを得ない事態が眼前にあります。
 期待される解決を祈ります。


Amazonでどうぞ