”楽園”読書の王道、ミステリーと旅

ぺんぎん堂の飯島です。意見は私個人のものです。

清明 第十四候『鴻鴈北(こうがんかえる)』

 冬に逆戻りしたようなお天気です。散り敷いた桜の花びらで、春の気分を食卓に置いてくれました。
 春は炊き込みご飯が楽しく、美味です。最近の掘り出し物は、新宿小田急ハルク地下の明治屋で買った「さくらご飯」でした。たけのことさくらの花を炊き込んで、見た目も春でしたね。


『楽園』のミステリー

 ミステリーというのは、読書の楽園の重要ジャンルのひとつでしょう。知恵の輪を渡されると、自然と解きたくなるように、『なぞ解き』は人間の本性と深くかかわる欲望なんだと思います。
 
 さて、『ネルーダ事件 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)』を読まなかったら、この本、『紺碧海岸のメグレ (論創海外ミステリ)』も読まなかったに違いありません。そして、『ネルーダ事件 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)』に書いてあったことに、納得することになりました。
 人が探偵になるための方法、そのひとつが、シムノンの小説を読むことだという、ドン・パブロの教えは果たして、正しいのか、ということで、実際にメグレ警部物を読んでみたいと思っていましたが、ぴったりの、新刊の本書を見つけたというわけです。



 読書の結果はどうだったのか?

 メグレは、事件の主人公に対する並々ならぬ好奇心を持って、被害者に共感するところから人物を把握し、事件の理解を深める。大事な心得は、並々ならぬ好奇心、これが探偵になる第一歩でしょうか。本書の場合、メグレは事件現場に赴くに際して「いささか特殊な指示を受けていた。」被害者は戦争中に軍の情報部で仕事をしていたから、「あまり波風を立てたくないんだ!」ということ。

 メグレは、人を見るときには、細部まで見逃さない視線で、風変わりな外見があってもそれを剥ぎ取って、本質をつかもうとする、人間観察と考えもしない質問で、前からだけでなく、後ろに回り込んだ姿も見ようとしています。
 面白いミステリーは、得した気分になります。


『楽園』の旅本

 旅本の大きな柱の一つが、「京都もの」と私が勝手に名付けた一群の書籍であることは論をまたないと思うのですが(もちろん「江戸・東京」シリーズもそうですが、東京の場合、「江戸・東京」というところがちょっとね)、「駅そば」もまた、突然ですが、細い柱の一本ではないかと思います。そんな「駅そば」の本は、マニアックな人が書いたものが多いのですが、本書、『全国駅そば名店100選 (新書y)』の著者鈴木弘毅もまた、北海道から九州まで延べ2000軒、1万杯以上食してきたというつわものだそうです。やっぱりね。



 店舗の立地については「改札の内側か、外側か」という問題は、食べるシチュエーションによっては、結構重要な問題で、最近は、ホームからコンコースへという流れがあるのだそうです。ホームで風に吹かれて食べるという旅情を味わいたい人には、東海道本線静岡県内の各駅や、鹿児島本線の門司ー熊本間がおすすめなんだとか。
 しかし、まずい、美味いは人によって違うというのも厳然たる事実で、著者もこのあたりはきちんと押さえていて、「六感のバランス」はひとによって違うことから、結局「美味い駅そば」に出会うには、「駅そば巡り」の旅に出て、食べてみるしかないということになるわけです。しかし、問題は、「生涯の食事回数はわずかに10万回前後」という定めがあるわけで、「このうちの貴重な1回を使うのだから、はずれは引きたくないのが人情」で、そのための、シンプルな方法も本書第1章の最後に書いてあります。
 この辺の感性は、「今日の昼飯は人生で一回しかない昼飯、あだやおろそかにすべきではない」という趣旨の話をしたというオペラ歌手のエピソードを、よく聞かせてくれた人のことを思い出します。
 ちなみに、京王電鉄京王線つつじヶ丘駅の「万葉そば」の「明日葉天そば」に魅かれますね。つゆ割のカツオ出汁もあるんだとか。

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