数学的思考の効果はあったのか

ぺんぎん堂の飯島です。意見は私個人のものです。


秋分 第四十六候『雷 乃(すなわち) 声を収む』

 蒼穹と呼びたくなる空の様です。季節は早いもので、もう秋分を迎えました。体重も増え始めるころでしょうか。季節の食べものに『舞茸』があげられていました。きのこ類を食べていれば、それほど体重は増えないかもしれません。私は最近、舞茸のおいしさを知りました。

 今日の珈琲は『キューバ』です。いろいろ考えることの多い豆です。


データを正しく見るための数学的思考ジョーダン・エレンバーグ 著)



見当たらない弾痕はどこにあるのか?

 こういう本を読む効果というのは、本当はどうなのか、疑問に思ったことがあると思います。そして、たいていはネガティブな結果だったりするのでしょう。本書について、私もそう思いつつ、でも、数学的思考を身につけたら、という、あまり現実的ではなさそうな思いにとらわれて、読みはじめたのですが、面白かったです。
 数学、特に、微分とか積分がなんの役に立つのかという生徒の疑問に対して、著者がいつも話すのが『アブラハム・ヴァルトと見えない弾痕』のエピソードだというくだりからは、眼から鱗で、面白く読みました。第二次大戦中に飛行機への装甲をどこにすれば最適かという問題で、「アメリカの飛行機がヨーロッパ上空での交戦から戻ってくると、機体は弾痕で覆われていた。しかし損傷は機体全体に均一に分布してはいなかった。胴体の法が弾痕が多く、エンジンにはあまり当たっていなかった。」という状況から、普通はどう考えますか。
 たいていは、空軍の将校が考えたように、航空機の運動性能との兼ね合いもあり、弾丸が一番当たるところに装甲を集中すれば、装甲が少なくても同じような防護の効果を得られると思いますよね。しかし、ヴァルト(頭の良さでは一番といわれていた)が出した結論は違っていました。それは、弾痕のあまりついていなエンジンにつけるというものだったのです。「ヴァルトの見抜いたことは、見えない弾痕はどこにあるかということだった。」というのですね。
 おわかりでしょう、「見当たらない弾痕は失われた飛行機にあるのだ。」。つまり、エンジンに被弾した飛行機の多くは、墜落し、帰還できなかったということです。この答えにいたる数式もあるのでありましたが、気にしなくていいと著者は言っているように読めました。

 このほか、「正だけでなく、負も含む場合の比率の落とし穴」など、示唆に富む『数学的思考』が盛りだくさんです。そこで、最初に述べた『効果』ということですが、

誤解だらけの電力問題竹内純子 著)


を読んでいたときに、『全量固定価格買取制度(FIT)の落とし穴』のところで、買取価格は、技術が普及し設備の価格が下がるにつれて段階的に下げていくようになっていますが、しかし、消費者負担は徐々に減っていくと思いがちですが、「買い取り費用総額は、買い取り単価と再エネによる発電量を掛け算した金額の合計です。


エネルギー政策には数学的思考が不可欠

 制度導入からの年月経過に伴ってこの層が積み重なっていくので、消費者が負担する総額はふくれあがっていきます。」というわけですが、制度導入時に数学的思考が働いていたのかと、疑問に思ったときに、『効果』を感じました。
 また、再生エネルギー産業の拡大による雇用の増加についても、この政策のプラス効果とマイナス効果、つまり、生み出される雇用とそれにより失われる雇用の二つを考えて実際の雇用拡大を計算する必要があるということなど、本書を読むに際して、『数学的思考』で、理解しやすかったと言えます。
 もちろん本書は本書として、エネルギー政策の問題について、再生エネルギーの導入拡大についても、全量固定価格買取制度の問題点を改めるとともに、『基金』制度などの再検討の提案などの冷静な話が、示唆に富む内容の理解を進めてくれます。


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