「お江戸の山」は楽しい

ぺんぎん堂の飯島です。意見は私個人のものです。

寒露 第四十九候『鴻鴈(こうがん) 来る』

 本日も快晴です。澄み切って、凛と冷たい大気の中、燕と入れ違いに、雁が渡ってきます。その雁もやがて北の国へ帰っていくわけですが、思うのは、『雁風呂』のこと。サントリーの宣伝で、結構しみじみとしましたね。最近、買おう買おうと思っていまだ果たしていないのが(それほど大げさな話ではありませんが)、『雁ヶ音』と呼ばれている茎茶です。お茶の茎を、海岸に残された小枝と見立てての命名ですが、これも趣を感じます。

 さて、しみじみとした出だしですが、今日の珈琲は「エチオピアモカ」。ストレートで飲むと、いかにもシンプルな味わいですが、原点的な感じで、しみじみと学生時代にいった喫茶店の名前を思い出します。


京都本と東京本について考える

 まあ、暇つぶしみたいな話ですが、京都本(こういうタイトルの書棚のコーナーをもっている本屋さんがあるんですねえ)と東京本について考えてみました。
 京都というのは、考えれば、今も昔も、「京都」です。一方、東京の方は、昔は「江戸」、今は「東京」で、京都本は京都というタイトルで済みますが、東京本は、ときに、『お江戸』のなんとかというのと、『東京』のなんとかというのと、『江戸・東京』というのと、大別して、三種類に渡るというのが、私の考えです。
 それはともかく、体質的にも、東京本は、江戸っ子のいわゆる、人の好い軽薄さがそこはかとなく漂ってしまうようにも思えるのです。
 たとえば本書で、『お江戸』もの性格を確認しつつ、散歩を楽しんでみるのも良いと思います。


お江戸超低山さんぽ中村みつを 著)



 タイトルからして、いかにもでしょう?でも、本書は、愛情深くつくられている気がします。カバーや表紙裏など、結構こっていますね。著者はイラストレーターで画家。だからイラストも楽しい。
 「いつも思うことだが、山は決して高さじゃない。四季折々、老若男女いつでも楽しめ誰でも登れる。それがお江戸超低山のいいところ。山を下れば、そこは人情と懐かしい佇まいにあふれている。
 待乳山の帰り道、一風呂浴びによった浅草観音温泉。そこで出会った下町おじさんは『宵越しの金は持たねえ』、気っぷがいい江戸人だった。
 夕暮れの谷中商店街では、おじさんおばさん、それにお姐さんたちの世話好きに思わず笑みが浮かんだ。王子や上野本郷もそう。下町にはまだまだ江戸の優しさがたっぷり残っていた。」
 というあとがきを読めば、著者の思い入れが明確です。それに、新たな知見にも満ちています。たとえば、目次の左下に「超低山マップ」がありますが、山手線に沿って、ぐるりとあり、なおかつ、京浜東北線京浜急行東横線など、鉄道駅のそばにあるという立地。
 それと、京都に『洛中洛外図』があるように、江戸にも鍬形螵斉が描いた『江戸一目図屏風』[http://www.e-tsuyama.com/report/2012/05/2000.html[(いかにもそのものずばりのタイトルです)というのがあるとか。

 取り上げているのは、愛宕山から西郷山まで11か所、アクセスを含めて、情報はしっかりしています。場所場所の味どころが紹介されているのも良いです。もっとも、蕎麦屋と甘味処が多いのも、江戸っぽいね。それと喫茶店。私としては、箱根山の三朝庵のカレー蕎麦。明治15年創業、カレー南蛮を初めて出した蕎麦処だとか。

 まあ、東京観光に来る人が、はじめからこれら低山を目当てに来るとは思えないですね。東京の人にとっては、江戸を散歩するというのも成り立つ観光でしょう。
 ところで、京都と東京では観光客はどちらがどうなのでしょうか。国土交通省に、『共通基準による観光入込客統計』http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/irikomi.htmlというページがありました。ちなみに、大阪府だけが未導入だそうです。
 でも、不粋なことになりそうなので、チェックはやめました。



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