書くことの不思議、試し書きだから

ぺんぎん堂の飯島です。意見は私個人のものです。

立冬 第五十六候『地 始めて 凍る』

 いよいよ、本格的な冬の始まりですが、妙に暖かったりするのは最近の気候の傾向です。海流か偏西風の偏りか、いずれにしても、健康には気をつけましょう。あさ、西空に、雲の中に青空が透けているときは、晴れてくるように思っていたら、やっぱり陽射しがありました。

 旬の食べ物、柿、銀杏、茸類、炊き込みご飯の季節ともいえます。最近は、鳥肉団子鍋に傾斜していますが、これと取り合わせの良い茸類を、椎茸だけでなく、いろいろ鍋に入れています。
 今日の珈琲は「モカ・マタリ&ブラジル」、ブレンドと呼べるほどの相乗効果はありませんでした。「モカ・マタリ」は、やっぱりストレートの方がいいと思いました。


「試し書き」の本質から見えるだろうと思える、あれこれ


 なにげなく、タイトルに眼がとまり、文房具やで、自分で書いている試し書きを思い出し、いろいろ考えました。万年筆の試し書きとしては、昔何かで読んだ、アルファベットの「a」や、漢字で「永」というのから、グルグル線や平行線、星型など、いろいろあるのでしょうが、普段気がついていない、無意識だけど、自分の中にある何かが反映されていると思われる模様や文字、形など、面白いところに目をつけたものだなあ、と、感心しました。

「試し書き」から見えた世界寺井広樹 著)



 「試し書きには、落書きとも寄せ書きとも違う味と魅力があります。」、「大部分は受け手を意識しないで書かれています。そもそもはペンの書き味を試すことが目的なので、他者を意識しないピュアな気持ちで書けるところが、試し書きの最大の特徴です。」と語る著者は、「試し書きコレクター」の肩書を持ち、世界106カ国、約2万枚の試し書きを収集しているとか。試し書きだけでなく、「離婚式」、「涙活」の発案者としても知られているのだそうですが、私は知りませんでした。
 1980年の生まれだというのですが、「電話で話しながら意味のない模様を書いた経験は、多くの人が持っていると思いますが、おそらくその大部分は中高年であり、しかも近頃は激減しているのではないでしょうか。」という観察は鋭い。もちろん、携帯電話の普及がそのバックにあることは言うまでもありません。
 お国柄が出るのも「試し書き」だそうですが、どんなものかは本書をお読みいただくとして、試し書きが重要な役割を果たす小説や映画について、『クローズド・ノート (角川文庫)』や『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』、そして、『Dr.スランプ (第11巻) (ジャンプ・コミックス)』の3冊を取り上げています。

 私は、最近プロフェッショナルの活躍とはどういうものかという興味から、ジェフリー・ディーヴァーの作品を読むことが多いのですが、その中の、『悪魔の涙 (文春文庫)』を思い出しました。試し書きではないのですが、筆跡鑑定の第一人者パーカー・キンケイドの活躍するミステリーです。

 文字というものの不思議さ、文字を書くことの、意識、無意識の自分とつながるこころの世界の、一端を、重くならずに、あれこれ考えるのにはちょうどいい「試し書き」の本書、読んだ後は、文房具屋の試し書きを見る意識がきっと変わります。

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