アメリカと中国が衰退したあとの世界とは?

ペンギン堂の飯島です。意見は私個人のものです。

芒種 第二十七候『梅の子 黄ばむ』

 午後から天気が悪くなるというのは、よほど注意をして雲の様子を見ないとわからないかもしれません。
 季節のさかな、海鞘だそうです。つくだ煮は「ばくらい」というのですが、むかし、これで一杯やって、おなかの調子を悪くした友がいたことを懐かしく思い出します。
 今日は、珈琲は「ハラー・ロングベリー」です。豆が柔らかく、割と低めの水温で淹れました。おいしくいただきました。

 ミステリーは欧州物を、というのが最近の、私の傾向です。同時に、これからの時代を考えるなら、手掛かりはSFにあるというのは、エマニエル・トッドのアドバイスで、両方の条件を満たす、しかも、時代の先端、空の産業革命といわれるドローンが我が物顔にそこら中に飛び交い、情報を集めまくっている世界が舞台なんですから。ということで、この一冊です。


ドローンランドトム・ヒレンブランド 著)


 著者は、ハンブルグ出身で、ミュンヘン在住のミステリー作家だそうです。すでに、名探偵シェフシリーズで知られているとか。そういえば、ケーブルテレビの海外ミステリーシリーズでなかったかな、などと考えてしまいました。わかりません。
 一方、トム・ケーニッヒというペンネームでシュピーゲルに経済コラム「待ち行列」を持っているそうで、最近のドイツの消費者の行動について書いるようです。
 
 ドローンランドはミステリーであると同時に非常に魅力的なSFであるというのが クルト・ラスヴィッツ賞の講評(ここに本書を選んだ理由がある。先にも言いましたが、エマニエルトッドの言に納得させられたところがあるから)だそうです。

 舞台は、数十年先の近未来のヨーロッパ、イギリスがEUを離脱しようとしており、そのための新憲法の成立をめぐってキナ臭い動きがあり、アメリカと中国はすでに衰退しており、過激なキリスト主義者、ロシアとイギリスのマフィア、エネルギー問題、太陽光発電をめぐるサハラ砂漠での戦争があったり、、波動発電により、今やヨーロッパでは、最も富める国はポルトガル、そして一方では、世界を牛耳る最強国はブラジルというのですが、ミステリーですから、もちろん事件が、それもEUの議会の議員が暗殺されるというものですが、起きるわけです。我らが主人公と、魅力的なヒロインが登場するのも定石どおりですが、おもしろくて、持っていると手が少し疲れるのですが、そんなことも我慢して、一気に読んでしまうでしょうね。
ドローンによる監視情報社会、高性能コンピュータと会話しながら事件の解決を目指す筋立ての社会ですが、その社会、もともと著者が描いた社会なのですが、著者本人はどう見ているのでしょうか。ペンと紙とサイコロで遊ぶロールプレイングゲームの四十年の歴史にかかわる本を出版していることでわかるような気がします。
 とにかく、面白いし、近未来の世界を考えるときに、そんなこともないだろうけどと、戒めながらも、参考にしたくなる一冊です。



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