世界の”潮目”は変わったのか?

ペンギン堂の飯島です。意見は私個人のものです。

大寒 第七十候『款(ふき)の冬華(はなさく)』

 本当に刺すように厳しい寒さです。空は晴れ渡っているのですが。
 今日の珈琲は『ブルンジ』です。三鷹の「まほろば珈琲房」というところで買いました。焙煎はシティーローストです。特有の香ばしさがあります。産地はアフリカの最貧国に数えられているのだそうです。見かけると、買うことにしていました。
 さて、トランプ新大統領が就任演説をして、第45代アメリカ大統領に就任してから四日目です。想像していたように、トランプさんがこれからやろうとしていることは、彼がこれまで、公約として語ってきたことですから、意外性はないといってもいいでしょう。まさか本気でやるつもりとは、なんて思っていたとしたら、それは、あまりにもアメリカ政治を甘く見ているということになります。
 語るところは(今のところは、直接交渉をしているわけではないので語るところによるしかないのですが)、よく考えられたプランと思える一面を持っています。たとえば、アジア戦略では、まずは親露政策によって中露の分断を図り、中国への経済、軍事の両面での優位性を図ろうとしていることや、EUへの牽制として、英国との距離を縮めたり、真の狙いはどこの国かを見定めて、トランプ新大統領のゲームプランの意図を読む必要があるのではないでしょうか。
 TPP離脱への大統領令に署名した今、日本への発言で残されている大きなテーマは、安全保障の問題でしょう。中国、北朝鮮に対する彼の戦略にあって、日本がどのように位置づけられているのか、韓国についてはどうなのか、このあたりが、カギを握ってくるのではないでしょうか?
 トランプ新大統領の出現で、ようやく私たちは、戦後70年間してこなかった、日本の安全保障や、世界情勢に伍して生きていく戦略を、自分の頭で考えることになった、ともいえるのでしょう。

 そこで、改めて、トランプ新大統領を誕生させたアメリカという国とアメリカ人について、手探りではありますが、自分で考えてみようと思います。その手掛かりとして、本書はいかがでしょうか。

アメリカの消失: ハイウエイよ、再び宮脇俊文 著)


 21世紀に入って、世界の情勢は、まるで人々の望む方向とは逆のほうへと流れ進んでいるように思えます。直近の出来事が、アメリカの大統領選挙だったのではないでしょうか?とはいえ、それは、選挙という手段で実現されたことですから、選挙結果を望む人があっての結果ですから、すべてではないにしても、大統領就任式が終わってからも世界のあちらこちらで、抗議のデモが起きるなど、アメリカ国内の分断にとどまらず、各国に大きなインパクトを与えています。
 まるで、これまで世界が進んできた方向から潮目が大きく変化して、まるで逆の方向に流れ出しはじめたかのようです。本書は、「アメリカ人が失ってしまったかに見える大切な夢の原点をもう一度探してみようという試みで書かれたものである。」、それは「ジャズのようなアメリカ論」で、「文学、絵画、音楽、映画の四つの分野をカルテット的に演奏してみたかった。」というものです。私的には、アメリカ人の抱えている孤独、寂寥感について、エドワード・ホッパーの光と影、ジョージア・オキーフの荒野、ジャック・ケルアックの「オン・ザ・ロード」、映画の「イージー・ライダー」、「コットン・クラブ」、「グレート・ギャツビー」、ブルース・スプリングスティーン(実は中島みゆきの歌で知ったのですが)などから読み解くアメリカとアメリカ人は興味深いものでした。
 資本主義の最先端を行くアメリカは経済最優先の国であり、本書では、その中で苦戦するオバマ大統領について触れられています。「夢を語るだけで実質は何も伴ってなかったじゃないか」という幻滅の声を紹介していますが、2008年の大統領選挙でのオバマの勝利は政策よりは夢を前面に押し出しての勝利だった。それはアメリカ人が原点に返ることを意味していた、と著者は語りますが、「彼が紡ぎだす新たな物語がソローやその後継者であるフィッツジェラルドやケルアックたちが描いてきたアメリカの物語を今度こそ実現させるための物語だと期待したい。」という著者の期待が、当面は裏切られたようみえるにもかかわらず、トランプ新大統領の出現も、本書で語られるアメリカ世界に淵源を持っていることを知るのです。とまれ、アメリカについて、考える手がかりではあります。


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