こういう角度もある”京都の本”

人鳥堂の飯島です。意見は私個人のものです。

大雪(たいせつ)『さけ魚群(さけのうおむらがる)』
 「さけ」の感じが見つからないのですみません。旬の野菜は、三ツ葉。お浸しが、歯ごたえ香りともにたまりません。鰹節は細かいものの方が美味しいように思います。

 珈琲はエチオピアモカです。淹れ方で酸味の感じが違うようですし、豆による多様性がこれほどあるものも珍しいように感じます。

表紙で判断しがちですが
 はじめに手にとって表紙を見ますね、たいがいは。でも、この本は、正直いって、違和感がある、という演出ではないのかと思えてきます。みうらじゅん著『マイ京都慕情』は、ギミックに満ちているようで、その実、普通という仕掛けの本ですね。

 観光シーズンを見事に外したことにも狙いがあり、冬枯れの三条大橋にたたずむ、怪人のような著者の写真と、いかにも「渚ゆう子」だろ、と思わせるタイトル、いかがわしさがプンプンでしょうよ、と著者の声が聞こえますが、でも、「オレだけの京都巡礼」ということで、時に露悪な、しかし、ときに妙にストイックだったり、「あの頃」というノスタルジーたっぷりの、本人だけの「京都慕情」、生まれて、若い頃まで住んでいた本人にとって、京都とはそういうものだろうということが綴られています。
 修学旅行が最初の京都訪問だったという、多くの京都にとっての日本人のよそ者にも、そのことは、わが身に引きかえてみても、ウチにある子供の頃の写真によく似た雰囲気が写っていて、わかるのです。
 しかも、近年、パワースポットとかいって、磁場の影響みたいなことを感じたい人々に人気の場所が、なんということもない、でも、ちょっと怖かった子供の頃の記憶の場所だったりして、さらに、哲学の道の「若王子」も出てきたり、こういう角度の京都本も面白いです。
 東京での生活が長くなった著者が、「たまに戻って、イメージ通りの京都を案内してもらうと、なかなかいい。みんなが好きな理由がようやく分かってきたオレなんだ。」というのだが、当然の結論だと思います。

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